ボッテガの未使用品を10万円強で

こんにちは、Tango245です。
ブリオーニ、チフォネリに続き、今回は第3弾、「ボッテガの未使用品を10万円強で」であります。イントレチャートで有名なボッテガですが、意外に歴史は古く創業は1966年。そのイントレチャートですが、聞くところによると本来の意味でのイントレチャート製法はカバのみらしく、その他の鞄や財布は「なんちゃってイントレチャート」のようです。加えてそのカバも最近のは艶気がなくて、なんかピクニックバッグみたいなので、残念であります。昔のカバはもっと「クタッ」としていて、艶気がありました。

そんなボッテガですが、意外にもアパレルに逸品が多いと、店主は個人的に思っております。もちろん奇抜なデザイン物も多いのですが、中にはネイビーやグレーのスーツ等、ベーシックな物も少なからず出ております。そういうのはかなりベーシックで、丸の内、大手町でも全然問題ない水準です。(実際店主もよく着用しています。)それでいてエスプリは効いていて、楽に羽織れる、不思議な逸品と思っております。

この感覚がどこから来るのかわからないのですが、思うに縫製や仕様の簡略さではないかと思っております。物によっては、ジャケットの内ポケットが無いどころか胸ポケットもありません。裏地は袖部のみ、また袖部のボタンがなかったりしてます。(あるのもあります) 縫製も雑ではないのですが簡略化されていて、日頃見てしまいがちな、ハンドの量やピッチの細かさ、切羽とかボタンホールの処理とか、そういうところは気にされていないようです。(ですがなぜかパンツはボタンフライの品が多く、そこはそうなんだと。)

モード系なので定価は高いです。通常ジャケットで30万円前後、パンツも10万円前後します。中には、インスタグラムでもご紹介しておりますが、カシミアのパンツ、定価30万円というのもあります。カシミア100%とはいえ、ウールの吊るしのパンツの値段が30万円。これまでの人生で見た最高値です。ハイパーインフレか1ドル300円が来ない限り、死ぬまでに見ない金額だと思ってます。眩暈と感動を覚え、どこをどうしたらそんな値段になるのか、店員さんに聞きましたところ、「うちのカシミアは、、、」と、今どきの店員さんには珍しく、マニアックに詳しくお教えいただきました。折角説明してもらったにもかかわらず、うわの空で、すみません、よく憶えておりません。

しかしながらよく考えてみると、こういう感覚こそ、洋服の楽しみではないかと思うわけです。特にモード系の洋服を買う楽しみとはこういうことなのではないかと。カシミアのジャケットやコートは普通にありますが、カシミア100%のパンツってまず作らないですよね。しかも(憶えてないですが)相当手間暇のかかった工程で作ったカシミア使って定価30万円で。もっというと裾幅なんと25cm。個人的には完全にネジ外れているとしか言いようがありません。ボッテガベネタ、日和ってないです。男前です。

ということで、そんな男前ブランドが出す、丸の内でも着れるベーシックなスーツ(サイズ44,46)、上下で40万円は厳しいかもしれないので、未使用品10万円強でいかがでしょうか。その辺のスーツの値段です。ちなみに上述の定価30万円のパンツですが、当店2色在庫しており、そのうちの1本、黒の方は同じ品番でジャケットもご用意しております。物欲が減退し最近お困りのお客様、覚醒必至です。さすがにこの辺りは表題の値段では出せませんが、ぜひよろしくお願いいたします。サイズ44です。

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

 

チフォネリの未使用品を7,8万円で

こんにちは、Tango245です。
今回は前回のブリオーニに引き続き、チフォネリについて書きます。チフォネリもブリオーニ同様、なかなか引きが弱いブランドであります。確かバーニーズも同ブランドの取り扱いを止めたのではないでしょうか(未確認です)。某百貨店が日本の国内工場でのメイドツーメジャーのライセンス生産を展開していることも一因かもしれません。(個人の感想です。)

ですが、このチフォネリ、店主の世代にとっては雲上サルトで、かつてはロンドンならヘンリープール、ミラノならカラチェニ、そしてパリならチフォネリという立ち位置でありました。それもそのはず、創業は1880年ですから、1790年のハンツマン、1806年のヘンリープールには負けますが、1906年のアンダーソン&シェパードより古い老舗であります。確か20-30年前は、エルメスのビスポークを手掛けていたはずであります。また当店にお越しいただいたお客様で、少し前にパリの本店に行かれたお客様がいらっしゃるのですが「なかなかなかに入れない重厚感があった」とおっしゃっていました。こういうメゾンなのであります。

それでそのヘンリープールやカラチェニとも並ぶ雲上サルト、チフォネリの仕付け糸のまだついている状態の未使用ジャケット、定価30万円以上する品を在庫限りですが7,8万円でお出ししております。国内ライセンス工場生産物が20万弱らしいですから、2着買ってもおつりが来ます。イタリアのどこかのファクトリー物(多分カルーソ)ではあるのですが、腕の付け根だけではなく袖腕全体が細く仕上がっていて、それが肩や背中や胸に影響を及ぼしているのか、(イタリア生産ですが)イタリアとも英国とも違う何とも言えない優しい感じで、チフォネリのエッセンスが満載の銘品であります。ぜひ国内ライセンス物やほかのクラシコ系と比べてみてください。サイズは44,46,48、茶系です。よろしくお願いいたします。

またこれとは別に30年ぐらい前の麻のダブルのスーツのデッドストックもあります。(写真下)これでモナコに乗り込んで、一勝負、ブチかましてきてください。まだ弱いようでしたらボルサリーノのパナマもつけます。うまくいった際は、当店が推しております、究極の3品をご検討いただければありがたいです。エルメスの書斎セットロレンツィーのワインケースもあります。

また当店チフォネリの未使用のシャツも比較的多数在庫しております。店主は、ジャケットとシャツはテイストを合わせるほうなので、チフォネリのジャケットにはやはりチフォネリのシャツ、あるいはシャルベのシャツがよろしいかと考えております。(シャルベのシャツは、ユーズドが少しまとまって入荷するかもしれません。入荷すればまたご報告させていただきます。これも実店舗最安値で出すつもりなのでよろしくお願い申し上げます。)

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

 

 

 

ブリオーニの未使用品を20万円以下で

こんにちは、Tango245です。
前回は、最近の商品が玉石混交のなか、限られた予算でいい品を妥協せずに購入するという二律相反する命題への咀嚼(くどくて長い)として、このところ7つのご提案をさせていただいていると書きましたが、今回はその第一弾、「ブリオーニの未使用品を20万円以下で」について少し書かせていただきます。

クラシコイタリア協会の中でも、ブリオーニの立ち位置は、いわゆるクラシコ系のキトン等に対し少し変わっています。加えて価格もスーツで70-80万円台と、キトンに比べ、勝るとも劣らない水準なので、「ブリオーニ買うならキトンのほうが、、、」とクラシコイタリアファンには敬遠されている感があります。当店でもブリオーニのパンツは割とよく出るのですが、スーツやシャツは動く感じがあまりありません。実際店主も昔はブリオーニよりキトンを選んでいました。ですが、最近では、10回あれば8回はキトンよりブリオーニを選ぶと思います。とりわけビジネス、特に外人と会うならブリオーニ着ていきます。理由は、「意外と普通」だからです。

ブリオーニが敬遠される理由は、スタイルがクラシコ的ではなく、やりすぎ感があるイメージとその価格にあると思います。ですが今のブリオーニにやりすぎ感はありません(物によりますが)。海外TVドラマの「SUITS」のハービーのスーツは確かトムフォードだと思いますが、ああいうのは日本では着れる職業も限られ、また実際なかなか着こなせないのではないでしょうか。一方、同ドラマの三枚目役のルイスが着ている、いたく普通のスーツがブリオーニとされていて、しかもそのブリオーニはドラマの中で何度かディスられます。何度もディスられるということは予定調和だと思いますので、ブリオーニの懐の深さというか余裕を感じます。(個人の感想です)

素材や縫製は超一流です。値段が値段なので素材をケチる必要がないです。好きなの使えます。普通のウールが普通じゃないですし、逆に、Super170とかも使ってもアピールしてないです。カシミアなんて他とそれほど違わないように感じるのですが、それは見る人が見れば、クオリティーが高いんだろうと思います。また、ある雑誌によると「すべての部分を手仕事で作り上げる」とあります。店主はその記事には懐疑的ですが、もしそうだとすれば、まるで機械で縫ったような非常に細かい縫い目が機械的に並び、そこには超絶な職人技が施されていることになります。シャツなんかも袖のカットが曲線でアーチ形(真っすぐな物もあります)をしており、そこにも非常に細かいピッチで縫われています。今のFRAYを買うなら断然こっちだと思います。

ただ問題は価格です。上記のようなことを考えても70、80万円台は高いですよね。(消費税で8万円。当店ならその消費税でチフォネリやベルベストの未使用のジャケット買えます。シャツもつくかも、です)半額でも40万円前後。まだ高いです。なのでそのまた半額の20万円以下ならいかがでしょうか。百貨店の有名ブランドの国内工場のよくあるライセンス生産より安いです。

素材や縫製が超一流で、シルエットやデザインにやりすぎ感がないスーツ。こういうのが究極のスーツではないでしょうか。マニカカミーチャやバルカポケットといったディテールは、「まあ、そういうのもいいけど」、という感じで、むしろそういうナポリのスーツに逆にやりすぎ感を感じてしまいます。価格が20万円以下なら大怪我にはならないと思いますのでだまされたと思ってお試しいただきたく存じます。残念ながらサイズは46と48のみで、数着しかありませんが、何なら大人買いしてしまってください。スーツに合わせるブリオーニのシャツも9800円からご用意しておりますので重ねてよろしくお願いいたします。

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

 

 

 

クラシコイタリアの荒波にもまれ

こんにちは、Tango245です。
昔から服好き靴好きが高じ、波はありつつも30年は散財して来た店主ですが、それに加速がかかったのが90年代後半からのクラシコイタリアブームであります。当時は雑誌の数も実際に取り扱う店舗数も多く、ブームには熱量がありました。店主が、ジンターラ(当時はラタンジを逆に読んでジンターラと)やキトン、アットリーニ、リベラーノ、カンパーニャ等を知ったのもこのころで、その後勢い余って現地に赴くようになり、フィノッロやパニコ、ガットやステファノベーメル等でスミズーラ、その後イギリス物にも若干戻り、クレバリーやロブ、アンダーソン&シェパードやヘンリープールのビスポークという流れで、荒波にもまれながらもなんとか泳ぎきりました。泳ぎきれたのは、まあ誰にも止められない「若さ」ってやつだったのでしょうか。

そんな90年代後半から2000年代前半でしたが、当たり前ですがサルトやブランド自体はそれ以前から存在しているわけでして、当店在庫の関係を調べてみると、バリーニがなんと1847年、エディモネッティが1887年創業です。フィノッロが1899年創業、ガットで1912年、意外にプラダが1913年創業、マリネラで1914年創業だそうです。ミラノの銘店ロレンツィーが1929年、アットリーニが1930年、ナポリの銘店ロンドンハウスが1931年、ブリオーニは1945年、リベラーノが1948年、イザイア、ボレッリが1957年、フィレンツェの銘店チェレリーニが1956年、ロータ、フライが1962年、ベルベストが1964年と続き、ボッテガも割と古く1966年となっております。それでキトンが1969年、ラタンジが1971年と続きます。

前にも同じような話を書いていますが、ガットやフィノッロのような歴史のある、雲上ブランドは一般のイタリア人はほとんど知らない(知らなかった)わけです。こういう店は特別な階級の人たちが代々オーダーする特別なお店であり、一般の人が出入りするような店ではない(なかった)ためです。実際、看板もなく、表札のようなプレート一枚のような店もあります。で、そういう店の逸品を、極東の異国、日本で一般の人間がその存在を知り実際購入していると。どうせなら歴史のある逸品、銘品とともに人生を歩んでいきたいと思います。バリーニの1847年なんて日本は江戸時代です。(ちなみに信濃屋の創業は1866年。日本にもこうした銘店はあります。) 日本人に生まれてよかった。イタリア人に生まれていればガットを知らずに生活していると思いますので。

それだけに昨今、閉店や逝去、あるいは経営が変わってしまっている例が相次いでいるのは残念であります。日本でも先日サンモトヤマの自己破産の報道がありました。昔はクラシコがそれほど流行る前から、並木通りの店の地下にコードバンのジンターラ(1足買いました)とかありましたし、もっと昔はグイドボージ(2着買いました)とかチチェリ(3枚買いました)とか、軽く置いてましたから凄すぎです。東京フォーラムとかでやる前のサンフェアとかも結構お世話になりました。

幸いにも店主はそんないい時代のサルトやブランドを一通り着倒して来れました。ポリシーも節操もなく横に広げすぎて格好悪かったと思っておりますが、今となってはこれも逆に財産かもしれません。そして価格高騰の昨今、どういう買い物が満足度を得られるか。無駄に身銭で着倒して来た身としても色々と考えています。(昔の値段を知っているのでそういうことも加味しています。) お金を出せばいいものが買えるはずですが、最近はそうもいかなく、高価にもかかわらず、なんか違うような商品も結構あるような気がします。またその一方でスーツやシャツはやはり消耗品だと思いますので、趣味性の高い希少品を除けば、現役世代のお客様が高いお金を出すのは厳しいかもしれません。ですがビジネスマンにとってスーツやジャケットは商売道具。妥協をするのはよろしくありません。商売道具に妥協するようではそこまでの人生です。玉石混交のなか、二律相反する事象をどう咀嚼していくか、当店ではこのところ、下記の7つを推しております。

1)最近のブリオーニの未使用品を10万円台後半で、
2)最近のボッテガのベーシックな未使用品を10万円強で、
3)最近の(MTMでない)チフォネリの未使用品を7-8万円で、
4)最近のベルベストやゼニアの未使用品を5-7万円で、
5)少しこなれたユーズドのブリオーニを、5万円前後で、
6)定価数万円のクラシコ系のベーシックな未使用品のシャツを1万円台で、
7)セッテピエゲの未使用のネクタイを1万円以下で、

これらはお客様ご本人はもちろんですが、洋服にはあまり興味がなく、これまでお仕事で頑張ってこられたお父様の今後の人生に彩りを添えられる、あるいは社会人として今後成長されていかれるであろうご子息のお仕事の一助となる、その入り口となるようなコストパフォーマンスの高いチョイスもしているつもりです。そういったプレゼントとしてもご検討いただければありがたいです。各項の詳細につきまして次回以降書かせていただきます。

 

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

 

雑誌の取材を

こんにちは、Tango245です。
当店、昨年末に開店し、約10ケ月が過ぎました。ブログやインスタグラムの閲覧数やフォローしていただいている人数、また実際にご来店くださるお客様も着実に増加傾向にあり、順調に営業できてきております。ほぼ完全予約制なので普段は閉めておりますし、プレハブの二階ですし、接客も未経験で、店舗としては突っ込まれどころ満載ですが、再訪していただけるお客様も増え、(冬の華のように)こんな日々がいつまでもきっと続いていくことを祈っている、次第です。これもひとえにお客様の懐の深さのおかげと感謝しております。皆さまいつもありがとうございます。当店に強みがあるとするなら、店主の長年の散財歴を活かして、昔の話をお話しすること、ロシアンカーフビキューナ等のレアなアイテムを「(なんとか)買える値段」でご提供すること、ブリオーニパープルレーベルベルベストやチフォネリ等の現行品は実店舗最安値を目指すこと、ぐらいですが、これからもよろしくお願いいたします。

それで先日、ありがたいことに、12月発売予定の雑誌の取材を受けました。以前からお写真等でお顔は拝見していた著名なエディター様が数日前ご来店くださり、雑誌で取り上げていただけるとのお話をいただき、その撮影を先日していただいた次第でありました。雑誌もかつては月に数種類購入しておりましたが、今は1種類のみとなっていて、その唯一購入している雑誌に取り上げられるとは、店主にとっては本当に嬉しいお話でありました。

2,3カット、商品を撮ってくださるということで、うちの商品達も誰が選ばれるのか、平静を装いながらも前日あたりからザワザワしておりました。「主役は俺だな」、「うちだと、あいつと、あいつと、あとギリであいつぐらいじゃない」、「あいつ、自宅から来るんじゃないか」、「それ(自宅から来る)は反則だろう」、「いやそれよりキャンセルもあるんちゃう(すみません)」、、、。

そんなこんなで迎えた当日、商品が選抜されました。選ばれた奴らは順当な顔をしておりましたが、一方で外れた奴らは、「なんであいつ?」と、納得がいかない様子であります。普段は「俺はなかなか出ないよ」とか言って威張っている割には落胆が隠せないようで、みんな正直であります。一方で後ろに回り込んで場所をさりげなく確保している奴らもいます。ちなみにその選抜に店主は関わっておりません。(後が怖いので)

それで選ばれなかった奴らが周りを取り囲んで圧をかける中、撮影が始まりました。さすがに地力はある面々なので、バシッとキメてくれましたが、一つだけ緊張で固まってしまった奴がいます。エディーターさんやカメラマンさんがなんとか緊張をほぐしてくれようとするのですが、負のスパイラルで顔が引きつったままであります。当初は選ばれなかった奴らからのプレッシャーだけでしたが、そのうち同じに選ばれた同胞達からも、「ええかげんにせえよ」と蹴りが入っています。涙目になりながら悪戦苦闘し、当初の予定時間を大幅に上回りながらも、最後はそいつも実力を出して、撮影はなんとか無事?終了しました。

しかしながら、今回深く感じたのは、記事に係る人の1カットにかけていただける時間と思い入れであります。店主もインスタグラム等に載せる写真を撮りますが、大体こんな感じかなと、2、3枚ぐらい撮ればそれで進めます。時間にすれば5、6分でしょうか。ですが今回の撮影では魅せる角度やシワのより方等、何十回にもわたる淡々とした細かい作業の繰り返しで、まるで黒澤映画のようで、1カット目はなんと1時間ぐらいかけていただきました。その雑誌の特集記事のメインの記事ならともかく、後ろの方の店舗紹介のうちの一つの写真(取り上げていただいておいてそういう言い方になってしまい申し訳ないのですが、そこではないのですみませんがお赦し下さい)です。その写真に1カット目1時間。それぐらい普通なのかもしれませんが、雑誌を作る皆様の作り込みの丁寧さを今回あらためて痛感いたしました。(めちゃくちゃマニアックです。) これまで雑誌に育てられてきたにもかかわらず、最近は雑誌に懐疑的な見方を時々してしまっていた店主でしたが、これからは立ち読みなんかで済ませずに、ちゃんと購入し、1カット1カット、なぜそうなのか、プロの仕事を研究させていただこう、と思った次第であります。なお記事や撮影された商品については、12月の雑誌発売後、新ためて書かせていただきますのでよろしくお願いいたします。

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

 

 

 

 

 

 

糸巻き&バラタカバー

こんにちは、Tango245です。
何ケ月ぶりにゴルフに行きました。こんな状況ですので中止にしようかとも思ったのですが、そのゴルフ場は普通に営業しているとのことなので、そのまま決行しました。ただ戦略性に富んだコース、とありましたので、ボールは相当無くすと思い、家にあるボールを適当にかき集めて臨みました。

順調にボールをなくしながらプレーが進行していったところ、あるホールで袋からつかんだボールの感触が少し小さく、見るとなんとロイヤルマックスフライであります。かつて一世を風靡した、糸巻き&バラタカバーの逸品であります。

逸品とは言え、30年前の、しかもボールです。「飛ぶ、飛ばない」よりも打ったらケガしないかと考えましたが、もはやスコアは関係ないですし、日ごろから「古い物はいい」と熱く語っていますので、使うことに決めました。

一発目、チョロです。やはりボールなのか、いやそれとも腕なのか、判断できないかったので、もう一発打つとまたチョロ。周りもボールを換えたほうがいいと言ってくれましたが、ゴルフはあるがままにするスポーツですし、多分腕のせいと思ったので、このまま続けました。3発目、その昔世界のAOKIさんが、アメックス(かダイナーズ)のCMの中で、「良さがわかるまで使え」と(カードと掛けて)言った5番アイアンで打ちました。少し重さを伴いながら、ジュチというか、ビュチというかギョチという感触とともに、30年前の感触が、昔飲んで忘れていた赤ワインの味を思い出すようなあの感覚で、蘇りました。また、打ち出しは低くその後、飛行機の離陸のように上昇する弾道(大袈裟です)や、自分は死ぬまでパーシモンと糸巻きと思っていたことも思い出しました。(赤ワインについてはこちらも)

次のホールもそのボールで感触を楽しみ、これはありかも(特にパッティングが)、と考え始めたその次のホールのテーショットで、やはりと言うか力んでしまい、ゴルフを始めた頃の、どスライスの弾道(上がりながら曲がっていき、前に飛んだ距離と曲がった距離がほぼ変わらないような)でボールは池に飛び込みそのボールとはお別れとあいなりました。最近はドライバーとボールの形状でスピンコントロールが効いているのか、ここ数年久しく見なくなっていた弾道でこれも懐かしさを感じました。昔はこの弾道を克服するのが一苦労でした。(ギターでいうとFかB♭ですね)

相当古いボールであることは間違いないので、ちゃんと飛んだことが不思議です。たまたまこのボールの状態が良かっただけなのか、それとも意外と使えるものなのか。また初めのチョロ二発もよくわかりません。何十年間寝ていたボールが、突然叩き起こされ三発目で目が覚め、その数発後、生き絶えたのかもしれません。袋に入れて持って来た糸巻きはこれ一球だけだったので、なんとも言えませんが、なかなかに楽しい出来事でありました。

それで、糸巻きボールは家にまだ何球かあると思い、かき集めてみると結構出て来たので、次回は糸巻きメインで回ってみようと思っております。せっかくですので、ホンマのパーシモン、名前忘れましたがプレートがエクストラ90でヘッドの刻印はヒロホンマのドライバー(昔はヒロホンマが高くて買えなかったです)も持っていきます。アイアンはJ’Sならチタンマッスルよりはクラシカルエディションかプロフェッショナルウエポン、ミズノならMP3ですかね。いやいっそケネススミスもいいかも、です。

ゴルフには色々な楽しみがあるかと思いますが、さすがに糸巻き(&パーシモン)はあんまりないかもしれませんね。まあちゃんと使えるのであれば、のんびり過ごすゴルフにはいいかもしれません。感触は最高でした。ちょっと使ってみたいと言うお客様がもしいらっしゃいましたら、お一人様2、3球でしたら差し上げます(実際のご使用につきましては自己責任でお願いいたします)ので、お気軽にお越し下さい。なお当店のゴルフ関係の在庫には、オーディマピゲのキャディバッグ付きアイアンセットや、大昔のフジクラのスピーダー857、クラシックなキャディバックを各種揃えております。名門ゴルフ場にちなんだ粗品も充実しておりますので、ご一考いただければありがたいです。

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

 

 

 

スエードのシューズ

こんにちは、Tango245です。
20−30年ぐらい前は雑誌全盛の時代で、読む用と保存用の2冊ずつ買う、というのも割と普通に「雑誌あるある」でした。店主も現地の取材レポートとかを読んでは、いつかはロンドンいつかはイタリアと思っておりました。またしっかりした特集記事は(今もですが)何度読んでも、今読んでも読み応えがあり、書いた方の想いや熱意が伝わってきます。

逆に割と「ふーん」と読んでいたのが、大御所のインタビュー記事でありました。中でもそのインタビューで着ているスーツやジャケットのサルトが、割とオーソドックスなので、マニアックなサルトを期待していた自分としては、少し拍子抜けの感が否めなかったわけです。

またその時感じていたことの一つに、なんでイタリア人(イギリス人も)はスエードの靴が好きなのか、ということでありました。雑誌のインタビュー記事や現地のスナップなんかには、相当な割合で、スエードの靴が出て来ます。これは今でも多分変わらないのではないでしょうか。

当時は「スエードの靴ねぇ」と、ちょっとよくわからない感じでありました。スエード自体、よくわからなかったのですが、加えていうと結構な割合でラバーソールだったりして、自分はラバーソールの革靴は苦手(個人の見解です)なので、さらに遠ざかる要因で、もっというと色が黒だったりすると、なんか全体を安っぽくしてしまう気がして、実際に買ったりもしましたが、まああんまり履かないかな、と思っておりました。

ですが、ここ数年、年のせいかもしれませんが、スエードもありだな、と思うようになりました。特に秋から冬にかけて、グレー、特にミディアムグレーのフランネルのスーツやパンツに、茶のスエードシューズという組み合わせは、秋の組み合わせとしては鉄板じゃないかと思っています。またこの組み合わせは、靴下の許容度を広め、定番はオレンジのカシミアソックスかもしれませんが、ポップな靴下との相性も良く、なかなか楽しめるんちゃう、と今頃になって喜んでいる次第です。

以前からスエードシューズがお好きなお客様には「今更なに言うてんねん」と怒られそうですね。これまですみませんでした。一方で店主のようにこれまでスエードシューズを避けて来られてきたお客様も多数いらっしゃるかと思います。お持ちでないお客様は今一度お考えいただければ嬉しいです。当店にも在庫がございますので、よろしくお願いいたします。ちなみにイチ押しは写真手前の新品同様のビスポークのクレバリーです。また当店、靴をお買い上げのお客様には、ロングホーズを粗品としてお持ち帰りいただいております。季節柄、自分では買わないようなポップな物も数多くありますので、この機会にぜひご利用ください。クレバリーのビスポークのスエードにGALLOのロングホーズ、それにモーラのフランネルのパンツにベルベストチフォネリのジャケット(当店で全部そろいます)で、オープンテラスのカフェで足組んで、ポップなロングホーズ見せながらブレグジットについての熟考でも如何でしょうか。ポンドやユーロの動向は重要ですので。

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

これからの季節

こんにちは、Tango245です。
10月ということで、少し涼しくなってきた感が出てまいりました。ということで当店在庫も、春夏物から秋冬物に衣替えをおこない、一部、インスタグラムでもご紹介させていただいておりますが、当店、極薄のカシミアマフラー及びスカーフを推しております。通常のカシミアももちろん在庫しておりますが、真冬の一時期に限定され、少し寒いぐらいの状況では、まだ早いかなと思います。またシルク100%もいいですが、少し光沢感が使いにくい感じもあります。そんな中で、極薄のカシミアのマフラーやストールがこれからの季節、ちょうどいい塩梅かと思っております。極薄カシミア100%はもちろんいいですし、シルク混、麻混も状況に応じてあれば重宝するのではないでしょうか。写真のように色々とご用意しておりますのでご検討ください。とりわけ透かしの入った白の極薄カシミア100%のストールなどいかがでしょうか?白をベースにうすい青とうすいピンクの2本ありますので、うすい青をご自身で、うすいピンクを奥様やパートナー様、あるいは娘さんとペアなどいかがでしょうか(素敵なお父さんということで)。あとジョンストンのカシミアの毛布もあります。ラグビーワールドカップもそろそろ後半戦ですが、13日の釜石での試合あたりは結構冷えるかもしれませんので、これもお検討ください。お二人で包まるには最適な大きさかと思います。

またスーツもようやく着れるようになって参りましたが、逆にまだまだシャツ一枚でも過ごせます。普段スーツやジャケットの際、店主は無難に白や青の無地の綿のシャツを着ておりますが、シャツ一枚なら柄物やウールのシャツも着ます。コーデュロイのシャツも着たりしますが、着ると結構新鮮です。そういったシャツも取り揃えておりますのでよろしくお願いいたします。定価11万のパープルレーベルのコーデュロイのシャツ、同じくパープルレーベルで定価16万円の極薄カシミア100%のシャツもあります。定価は無茶ですが、当店では普通のシャツの値段で出しておりますので、是非とも定価を試してみてください。普通のシャツですので誰にも知られず満足度も高いかと。どちらも未使用品で、サイズは15とSになります。

それとこれからの季節、ローゲージのコットンセーターなんかも推しております。オープンカーが一番似合う秋です。この1、2ケ月にかけていただきたく思います。(サイズ50相当)また、シャツの上に着る、vネックや丸首のハイゲージのセーター(サイズ46、48)も色々とあります。ブルネロクチネリやクルチアーニ、ブリオーニ、キトン、マーロ等の極上品を普通の値段で買ってしまってください。他にもビキューナのコートを始め、カシミアの厚手のセーターや毛布、手袋も色々とございますが、これらはもう少し寒くなった頃ご紹介させていただきます。

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

 

テーラーの皆様(2)

こんにちは、Tango245です。
前回のブログは、「小さいサルトの吊るしのスーツってコストダウン入っていないのだろうか?」、入っていなければお買い得ということになりますし、コストダウンが入っていれば、(程度問題ですが)そのサルトの物とは似て非なる品?、と書きました。それでそういうのわかるべきなんでしょうけどなかなかわかりません。と書いているわけですが、一つ、水平比較でフラワーホールの写真を徒然なるままにインスタグラムに載せさせていただきました。フラワーホールは実際の着心地とはほぼ関係ありません。だからなのかはわかりませんが、簡略化の傾向があり、モーダ系の中にはないものもあります。ですがここに超絶技巧が施されていると、こちらもテンションが上がり、結果、着心地も姿勢も数段よくなるような錯覚を覚えます(個人の感想です)。またサルトのそういった心意気に嬉しくなったりします。一事が万事で他の箇所にもこれが通じているのか、ここだけは譲れないのか、あるいはわかりやすいのである意味狙い撃ちされているだけなのか、これもいろいろとありそうですが、フラワーホールが簡略化してあるフルハンドは、店主にとって少しテンションが下がる要因ではあります。

それで本題?ですが、先日のブログで、ツイードについて、一時期はハリスツイードのタグの変遷のコンプリートを目指し購入し続けたものの、今はそのほとんどは倉庫で熟成中、と書きました。自分のサイズがなかなか無かったことと、シルエットがいささか無骨であった点がその理由でありました。ですが素材自体は伝統あるハリスツイードのビンテージです。自分が着なければサイズの問題は解決、シルエットもアレンジできれば、素材の良さも相まって、逸品を生み出すことも可能だと考えています。

また以前ブログで、「テーラーの皆様」と言う題で、いい素材が枯渇していく中、当店の古いベルベストやブリオーニ、カンパーニャを題材に、逸品や巨匠物との「勝手コラボ」はいかがでしょうか、とご提案させていただきました。テーラーの皆様が、日頃お客様のご要望にお答えされている中で、溢れ出てくる別のアイデアも多々お有りになるかと思うのですが、お客様の手前、なかなか展開できないそんなアイディアを、空き時間に古い逸品や巨匠物を利用して試していただけませんか、素材はこちらでご提供いたします、というのが趣旨でありました。それで、このビンテージのハリスツイードでも「勝手コラボ」は可能ということで、ご提案させていただきたいと思います。

90年代前半のベルベストやブリオーニは、生地はいいものが多いですが、肩の感じとか、なかなかに手ごわいシルエットであります。(基本的に古い品物を薦める当店も、ベルベストやブリオーニは今のほうが数倍いいと感じており、ただ今の値段だと手が届きにくいのも事実なのですが、当店の、未使用品で定価の2,3割というような価格設定であればいかがでしょうか? と申しております。) ですが昨今、これまでの細身のシルエットもどうやら針は振り切った感があり、流れとしては、広め、ゆったりめに進みたい(進めたい)ところのようで、そういう意味で昔のベルベストやブリオーニは素材としては面白くなってくるはずで、そのままでは手ごわいとしても、少しいじれば、オリジナルを超えた1点物の逸品ができるのでは、と考えています。ハリスツイードも同様で、さらにツイード特有の、ダメージを活かしたような提案ができれば、素材感も相まってより格好いいスーツやコートができるのではないかと、思っています。

また当店、古い英国製のバーバリー、アクアスキュータムのトレンチコートやステンカラーコートも、ハリスツイード同様、倉庫で熟成中であります。国産のライセンス物の方が、価格が高いという現在の評価に納得がいかないためであります。こういった品についても、テーラーの皆様のセンスと技術で、ぜひ再評価の機会をお与えいただければ幸甚です。(すみません、くどいです。ですが本当にそう思っています。) もし何か新しい展開もお考えのテーラー様いらっしゃいましたら、ご検討いただければ幸いです。引き続きよろしくお願いいたします。(全くもって大きなお世話ですみません。ですが本当にそう思っています。うちが絡まなくてもいいのでそういうのをお願いしたいです。)

 

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。

小さいサルトの吊しのスーツ

こんにちは、Tango245です。
現在、物欲の波が落ち着いている店主ですが、そんな状況だと余計なことを考えてしまいます。例えばセレクトショップや百貨店が展開してくれる、フルハンドを謳う小さいサルトの吊るしの製品、販売価格が我々が現地でオーダーする価格とあんまり変わらない気がするのですが、これはどうなんだろうか、とかです。セレクトショップの利益やリスクや輸送コストを考えると、(その価格で売れるかどうか、買うかどうかは、とりあえず別として)ざっくりで2倍ぐらい差があってもしょうがないかな、と思います。それを企業努力であまり変わらない価格を実現してくれているなら、非常に良心的で魅力的な品物ということになります。

セレクトショップは大量に注文するわけですから、相応のディスカウントをお願いできると思います。ファクトリー生産であれば、大量注文ほど合理化、効率化で生産性を上げることができ、ファクトリー側も大量注文は大歓迎だと思いますので、相応のディスカウントは受けてくれると思います。その結果、我々もそのディスカウントの恩恵を受けられるので、セレクトショップには頑張っていただきたいところであります。(個人的にもベルベストとかは結構気に入っています。)

ですがフルハンドを謳っている、型紙も使わないような小さいサルトの場合はどうでしょうか。生地は支給、あるいは大量購入が効くかもしれませんが、基本的に手間は同じのはずなので大きなディスカウントには応じられないのではないかと思うのです。昔、確かロンドンハウスのルビナッチ氏(違っていたらすみません)のインタビュー記事で「今まで職人を解雇したのは一度だけで、理由はその職人が生地を重ねてカットしたため」とありました。「解雇したのは一度だけ」という家族経営を言いたかったとは思うのですが、過去に一度しかないくらい、生地を重ねて切ることはサルトにとってはあってはならない行為ということになります。こういうことを考えると、フルハンドのサルトにとって、合理化、効率化なんてほとんど入る余地がない気がします。

あるサイトに出ていた、採寸から納品まで実質一人でこなしている日本人のテーラーの人のインタビューによりますと「月に5、6着が限度」とありました。イタリアだと諸々含めて年間50着というところでしょうか(休みも多そうですし)。数人の職人でこなすとしても、200着ぐらいが現実的なのかなあ、と思います。一方で、セレクトショップが絡むと、例えば、44、46、48、50の4サイズ、生地で3パターン、春夏物と秋冬物の年2回、各5着と仮定すれば1社だけで100着を軽く超えてしまいますので、この2者は相容れない立ち位置で、そもそもコラボに無理があるのでは、と思います。通常の注文に加えて、さらにこういったまとまった量の注文をこなすには、ミシンを多用するのか、工程を省くのか、外注に回すのか、なんでしょうか。こうなると元々のそのサルトの品とは似て非なるものになってしまっているかもしれません。(個人の感想です)

フルハンドを謳い、日本でも評価の高いイタリアの某サルトは、その紹介コメントで「年間1000着以上を仕立てる」とあり、またどなたかの個人のブログでそのサルトのスーツを、写真も交え「見るだけで気の遠くなるような作業の仮縫い工程」と評されておりました。一方で時系列はズレ(上記よりもだいぶ前)ますが、そのサルトで1年半修行した人のインタビュー記事で「当時13人いた職人が、最後は本人とその弟と自分の3人になってしまった。」とありました(そしてその人も別のサルトに移ります)。一度減った職人を増やすのは容易でないと思いますので、この3つを成立させるのは可能なのか、と考えてしまいます。

クラシコブームも20年以上続いているかと思いますが、キトンやベルベスト等のファクトリー物は、セレクトショップや百貨店との付き合いが継続されている一方で、割と小規模なサルトは数年で取り扱いが終わってしまっているよう気がします。サルト側、店側、どちらが断っているのかはわかりませんが、難しい問題があるのかもしれません。

まあ着心地が良ければハンドかどうかは関係ないわけですけど、ハンドだから着心地がいいとされているわけで、またその分手間がかかるので高価になるわけで、着心地がいいから高いわけでもなく、一方でこちらも高いお金出すならハンドにこだわりたいですし、とはいえハンドこそ上手い下手の差は激しいはずで、下手なハンドならハンドじゃなくてもいいのかもしれませんし、上手ならセレクトショップの中国製もアリかな、とも思ったりします。そういうようなことは自分でちゃんと見極めがつかないとダメなんでしょうけど、着心地の悪いものはすぐわかりますが、着心地の良さは抽象的ですし、ハンドについてもせっかく買った品物をバラして確認する(そもそもバラしたらわかるのかという問題もあります)こともできませんし、ハンドに見せられるようなミシンとかも普通(ある意味本末転倒)になっているようで、なんか疲れます。

そんな余計なことを諸々考えていると、小さなサルトの吊しの高額品を国内で定価で購入する気にはなかなかなれなくなります。個人的には、大資本が入る前の、メールもなく電話やFAXでやりとりし、現地まで出向いてオーダーしていた頃のシンプルで注文数も無理のないのんびりした平和な時代の程度の良い品を手に入れるか、旬は過ぎ、コストダウンも入っているかもしれないというモヤモヤ感は持ちつつも、セレクトショップや百貨店が取り扱いをやめ、処分価格で放出するものの中から気に入った物を選ぶか、あるいは一部のブランドのようにセレクトショップを通さず独自でトランクショーを現地と同じ金額で行なってくれているところで、その時の為替の水準を睨みながらオーダーするのが現実的か、と余計な事を考える今日この頃の店主であります。まあそんなことを考えてしまうのも物欲の波が静まっているからで、こんなモヤモヤ感を吹き飛ばされるほどの物欲の波がまた来ればいいな、と思っております。(下写真:個人的に大好きなベルベスト。)

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。