タグなし物

こんにちは、Tango245です。
海外から時々、「こういうのあるけど?」とお話をいただきます。最近は為替がこんな状況なので難しいのですが、向こうのお金持ちのオーダーは正直なかなかであります。仕立てる方とすれば太いお客さんなので、絶対に粗相ができなく、いきおい、いい素材がまわり、腕のいい職人さんが担当することになり、我々が向こうへ行って、頑張って1足や1着、オーダーして上がってくるものとは扱いが違うわけであります。まあこれが資本主義というものでしょうから、文句があるならそういう太いお客さんになるしかなく、実際日本人でもそういう人は少なからずいらっしゃるので、ノーチャンスではありません。いささか古いお話ですが世界のAOKIさんのように、アメックスカードを5番アイアンのように良さがわかるまで使えば、その良さがわかるころには、見える景色も変わっているのかもしれません(が、よくわかりません)。

それで、その向こうの粗相ができない環境で仕立てられる逸品群の中で、さらに上級ランクなのが一部の「タグなし物」であります。一般にタグがない理由はブランド価値の毀損の防止だと思います。ビスポークの世界では、そのレベルに達していないものができてしまった場合になるかと思いますがそれは売る側の論理で、もう一つ買う側の論理でタグがない場合もあります。

はっきりいって我々とカラチェニやエルメスと比べると、残念ながら一般的にはカラチェニやエルメスの方が格上なわけです。ですが向こうのお金持ちの場合は、カラチェニよりそのお客様の方が格が上な場合が普通で、そういうお客様の中には、「申し訳ないが、僕のネームは書かないでくれないだろうか、いやタグも付けないでくれ給え」という人が結構いらっしゃいます。もっとも向こうの富裕層はタグやネームがあろうがなかろうがそんなことはどうでもいい人が大半だと思いますが、どこでスーツや靴を仕立てているのかをストレートには明かしたくない、あるいは手書きのネームやタグでバランスが崩れる等々、そのようなナルが入っている人はタグをあえてつけさせないわけであります。当然そこまで拘るわけですから、生地や仕様はもちろん仕立てまで拘っており、請ける側もさらにハードルが上がります。結果的にそんな買う側理由の「タグなし物」は、さらに上級ランクの品の割合が高いということになります。

世の中にはタグにお金を払っている人も多数いらっしゃいまして、実際ブランドによってはタグの威力は絶大であります。ですがタグがあることからくるその満足感は、自己顕示欲か安心感でしかなく、どちらも突き詰めると論法としては脆弱で自分の存在感や主義主張を追い込んでしまいます。タグがあろうがなかろうが、いいものがいいわけですし、そうでないものはそうでなく、「タグなし物」が上記のようにさらに上のランクなもので、ましてや価格が同じならそちらの方が本源的には魅力的であるはずです。

しかも現在都合のいいことに「タグなし物」には値段が付いていません。理由は、①商品ではなく、タグにお金を払っている点、②タグが付かない理由を売る側の論理で考えてしまう点、③実際そこの商品ではないリスクがある点等々でしょうか。なのでそういった理由で現状値段が付いていない、買う側理由の「タグなし物」は価格と品質の両面で魅力的だと思っています。

問題は、その「タグなし物」が売る側理由なのか、買う側理由なのかをどう見極めるかですが、そんなものはおなじみの「考えるな!感じろ!」であります。少なくとも売る側理由のタグなしなら沼の住民の皆様なら恐らくお分かりになるはずで、物を見て、「これはいい」とお感じでしたら、値段も安いので、基本、「買い」なわけであります。仮に、仮に、万が一、外したとしても大怪我はありません。少なくとも次につながります。そんなストロングスタイルを5年10年続けて、日本では一部の「タグなし物」の方が一般的な「タグ物」よりも値段が高い世の中になれば、買う方もなかなかになっているんじゃないかと思っています。その際、外人に言ってやりましょう。「タグ付き買って喜んでいるうちはまだまだなんだよ。お前はベルサーチか!」 その道中、道に迷って人の気配がした時の合言葉は、「タンゴ?」、「ニーヨンゴ」です。

大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらも読みいただければありがたいです。*コーヒーのご提供につきましてはコロナ蔓延を鑑み、現状自粛させていただいております。