甲高幅広のお客様

こんにちはTango245です。
前回前々回と別注靴について書かせていただきましたが、今回で、とりあえず最後になります。靴職人に取ってその人の足型に合った靴を作るのはそれほど難しいことではないと思います。足形を木型に移しそれを忠実に縫い上げればいいわけです。ただ足形がきれいな人はそれで問題がありませんが、例えば店主のような甲高幅広の足型の人間の場合、忠実に縫い上げてもらうと、カレーパンのような靴が出来上がってしまいます。ですが初めてのビスポークの場合、舞い上がっていてそんなことはわかりません。「素材、シェイプ、履き心地等、最高な逸品が上がってくる」と、採寸時はもちろん、完成を待っている数ケ月の間にも期待は膨らみ、そのピークで納品となるわけですが、そこでカレーパンのような実物と対面し、「えっ」っと沈黙、一呼吸おいて、掛けた費用や期間が走馬灯のように流れたあと、現実に戻されます。結構涙目になっていたりします(個人の体験です)。それでも「履き心地はいい」と自分を納得させようとしますが、早晩お蔵入り。「もうビスポークなんてしない」と思うのですが、喉元過ぎると、、、でまたお願いしてしまいますが、結果はほぼほぼ同じです。足形が悪い人の「ビスポークあるある」、「不都合な真実」です。(これがあるため、当店の別注靴は基本的にハンドソーンの10分仕上げでありながらRTMで展開させていただいております。もちろん足型が綺麗なお客様にはビスポークもお受けいたします。)

とはいえ、稀に数値は甲高幅広なのに、見た目はスリムに見えるという靴も(その逆の靴も)あります。「物理の法則は超えられない」はずなのですが、「目の錯覚」というやつでしょうか。実際にそう見えるのですから甲高幅広の店主には朗報であります。当店としましても、物理の法則を超えた、この「目の錯覚」は突き詰めていきたいと考えております。

問題は、その「目の錯覚」をどうやって手に入れるかです。格好良さはまだ数値化できないと思いますので、ディープラーニングや3Dプリンター等がこなれてもまだまだ無理でしょう。結局は偶然に出来た物を探すしかないと思います。実際、多くの偉大な発明や発見は偶然をきっかけに生まれています。帰納法的アプローチです。

実際当店が、今から偶然にたどり着くべく、トライ&エラーを繰り返すわけにはいきません。帰納法で、店内にすでにあるビスポークで、その靴の美しさが足形から来るのか、目の錯覚から来るのかを検討し、とりわけ、長い間黙々とビスポークシューズを縫い続けた、ジョージクレバリー氏、テリームーア氏、ガエターノバストラ氏といった巨匠の経験値に頼りました。そして第一作目のサンプルとして、当店でも人気が高く、目の錯覚が入っているに違いないコークストリート時代のクレバリーのビスポークをレスペクトさせていただいた次第です。サイズ9相当を6‐3/4で縫うと小さくなった分、かなり細く感じ、自分には無理かなと思いましたが、なんと普通に履けた、というのは前回ご案内の通りです。英国人には稀と思われる甲高幅広の足型を、手が勝手に動いたのか、見抜いて調整を入れたのか、それとも何度かやり直したのかはわかりませんが、さすがというか、やはりというか、ジョージクレバリー御大、恐るべしです。

ということで現在は当店にある、フォスター&サンのビスポークをレスペクトとしたものを製作中で、その後ガット、マリーニ、パリロブあたりの「目の錯覚シリーズ」を考えております。これはどう?というリクエストありましたらできる限り対応させていただきますので、甲高幅広でお悩みのお客様いらっしゃいましたらお気軽にお問い合わせください。

大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらも読みいただければありがたいです。