こんにちはTango245です。
今回は着道楽について書かせていただきます。食事や車に比べるとまだまだ着道楽の楽しさは残されていると店主は思っています。価格も高騰しているものの、ワインほどではなくて、今ならまだギリギリ手が届く感じで、これからも上昇するなら持っている満足度も高まるというものです。また車は技術革新で現行車が陳腐化していくのに対し、洋服や靴はサイズの問題はありますが丁寧に着れば一生どころか子供や孫の代まで継承していけます。いい素材や職人が少なくなっていく中、今のうちにコツコツと買い揃えていくののも楽しいのではないでしょうか。英国人がよく言う、good investments という奴です。とはいえ高価なものを揃えていくわけですから、むやみに数を増やしたり、中途半端な品で妥協すると結局遠回りになると思います。
店主は高校生の頃から洋服にお金をかけてきました。リアルタイムではありませんでしたが「傷だらけの天使」を再放送で見てメンズビギ(ビッグワンかと思った)を知り、大学生の頃は「赤いカード」にお世話になりながらデザイナーズブランド一色、社会人になると序盤でイタリアブームが起こりアルマーニ、ベルサーチ、フェレの洗礼を受け、それ以降はクラシコイタリアに改心し現在に至る、というお決まりのコースを歩んできました。また仕事柄、「安い、と思うと買ってしまう」、「迷ったら全部買う」プログラムが体内に埋め込まれ、このような状況に至っております。それでも何度かの断捨離のサイクルがありそのたびに処分もしてきましたが、昨年末にそのサイクルを潜り抜けた精鋭たちとともに、店を出すという暴挙を起こしました。ご来店いただいたお客様からは「よくもまあこんなに買いましたね」というお声をいただきます。ですがバックヤードにはまだ相当残っておりますし、それよりも断捨離のサイクルで処分した量はこの何倍もありますので、本当にどうかしていたと思います。「誰にも止められない若さ」って奴だったのでしょう。
ただ後悔はしていないのですが、もう少し効率的であってもよかったと思っています。AIのように行動を最適化する必要はないと思うのですが、あまり回り道をするのも何なので、「程よい無駄使い感」が心地良い、そしてAIに負けない為の「(スイングでいうところの)タメ」になるような気がします。そしてその「タメ」がgood investmentsを生み出す素のような気がします。
それで本題ですが、最近思うことがあります。時折雑誌には、ファッション業界の大御所、気鋭のインタビュー記事が載ります。インタビューが進むにつれ「今日お召のスーツは」となるかと思いますが、少なくない割合で古いスーツが紹介されます。メンズプレシャス誌(読んでます)を遡ると、カルロバルベラ社の2代目ルチアーノ・バルベラ氏は「30年前のカラチェニ」、タイユアタイ出身でフラージシモーネリーギのシモーネ・リーギ氏は「10年以上前に仕立てたキトン」、ロンドンハウスの3代目ルカ・ルビナッチ氏は「2007年に仕立てたスーツ(掲載は2016年春号)」というように、かなり古いスーツを着用され、インタビューに臨まれています。こういった面々がインタビューで奇をてらうことはないと思いますので、普段からそういう古いものを長く着用されているのだと思います。また仕立ては最近でも「生地はイギリスのビンテージ」という例も含めると、ほとんどのインタビューがビンテージ物を着用されているのではないかと思います。実際、リベラーノのアントニオ氏も日本の信濃屋の白井氏や赤峰氏も恐らく同じだと思います。
要するに「そういうこと?」と。大御所の面々は、コート、スーツ、ジャケット、シャツ、靴、鞄等の「体幹」部分は昔の品で押さえ、あとはスパイスで最近のエスプリ効かせている、という話だと思うのですが、何故彼らは新しいスーツを着ないのでしょうか。我々と違い、原価で着れるわけですから値段の問題じゃないと思うのです。それは結局「昔の逸品には勝てない」、「クラシコイタリアの範疇においては流行りは重要ではない」と言うことなのかもしれません。少し前に、「セットアップでジャケットは長年継続でその間パンツを2、3回買い換えるのが、、、」と書きましたが、お歴々と同じような方向性だと思い自信を持ちました。と同時にパンツを買い替えるのはある意味逃げで、逃げているうちはまだまだ甘いのかも、と考えましたが、そうなると「道楽」というよりは単なる「道」になって泥沼に入り、今度は悲壮感も出てくるので、ここは寸止め感覚で、やはり「パンツ買い替え」で行こうと思っております。
それで長く着ることになるので、どこのを買うか、と言う「入口」が非常に重要かと思います。個人的にはコート、スーツは、ヘンリープール、コスタンティーノ、アントニオパニコ、ジャンニカンパーニャあたりを押します。それと、これが大事だと思うのですが、ご本人が現役バリバリだったころのものがいいと思います。その意味では、ヘンリープールは均一性が維持されているのでいつの時代も安心感があるかと思います。シャツは、ターンブル&アッサー、コスタンティーノ、シニスカルキあたりをスーツの地元に合わせるのがいいのではないでしょうか。ミラノならミラノ、ナポリならナポリと、シャツとスーツは地元を合わせておいた方が無難だと思っています。
靴もやはりビスポーク物(とはいえ甲高幅広の足型で作ったビスポークは出来上がりのシェイプが心配なのでそういう足型の人はすでに出来ているビスポーク物)を勧めます。ビスポーク物は革の質感、マージンの削り方が既製品とは違います。経済合理性からいえば、既製品は、在庫リスクがあるので最上級の革は使えませんし機械縫いだと精度の問題でマージンをより多く取らざるを得ません。また重さもビスポーク物は驚くほど軽いです。量産車とレース車両、その辺の時計とリシャールミルぐらい違います。ブランドとしては個人的にロンドンロブ、ジョージクレバリー、フォスター&サン、パリロブが好きです。また古いもののほうが革の質も職人の腕も高いです。ぜひとも古いビスポーク物をご検討いただきたく存じます。
有難いのは、こういった巨匠物でも現状は、特にプレミアムがついていない点です。それどころか単なる中古品扱いで安価な値段がついています。クレバリーもジョンロブも現行の既製品とビスポークの値段差は(どちらも新品として)3,4倍はあるでしょうか。しかしながらセカンドハンドになると、あまり差はないように感じます。また同じクレバリーのビスポークでも、現行品と古いもの、また古いものでもロイヤルアーケード時の物とコークストリート時の物であまり差はありません。質感や作り込みの凄さは一目瞭然なのにです。個人的には現行品の新品のステファノベーメルより、程度がよければ90年代のユーズドのステファノベーメルのほうが高くてもいいと思っています。
501は時代や仕様によって価値、ひいては価格が細かく細分化されています。マーチンのアコギやフェンダーのストラトキャスターもそうです。価値があるものは現行の新品の何倍から十数倍、物によってはそれ以上の値段がついています。パニコやカンパーニャのビスポークもそうなる可能性は十分にあると思っています。なので単なる中古品程度の扱いがなされているうちに大人買いしておくのはいかがでしょうか。今なら新しく1着ビスポークする値段で数着買えます。「やはり新品が、」というお客様は、ブリオーニやチフォネリ、パープルレーベルを安く仕入れて、暑い日も雨の日も涼しい顔して着倒すのはどうでしょう。ブリオーニならシャツもブリオーニ(ビンテージならブリーニ)、チフォネリならシャルベ、靴は、ブリオーニなら英国物のビスポーク、チフォネリならパリロブかガットでしょうか。パープルレーベルなら合わせるブランドは幅広いと思います。
上記の品は全て当店にご用意があります。サイズさえ合えば選り取り見取りなのでお気軽にご連絡ください。なお大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらとこちら、こちらもお読みいただければありがたいです。