パンツについて

こんにちはTango245です。
前回シャツについて書かせていただきました。長くなってしまいすみませんでした。今回はパンツについて書かせてください。当店は御案内のように古いものを取り扱っておりまして、スーツも同様です。靴は基本的に古いものほど格好いいと思っておりますが、スーツは、個人の感想ですが、靴とは違い、90年代前半だと少しというか、割と寒いです。むしろ80年代の方がいい感じで、もっと古いもの、フランス製のピエールカルダンとかサンローランに時々格好のいいもの(倉庫にありますので折を見て出します)に出会います。90年代半ば以降は今着ても何ら問題ないと思います。先日、お見えいただいたお客様が、スカルピーノ時代のコスタンティーのや同時期のカンパーニャのスーツをご試着されましたが、上着については最高にかっこよく、スミズーラした当時の店主より似合っていらしゃっていてうれしいやら悲しやらでございました。ただ、パンツについては今となっては少し太く、また長めですが、太いものや長いものを細くや短くはできますし、またパンツは太くなる傾向があるので、「どう調整しましょうか」と、ある意味前向きな悩みでありました。繰り返しますが上着をお召しの感じは本当に美しかったです。

それで思うのですが、上着よりもパンツの方が流行のサイクルが早いんじゃないかと思った次第です。いわば靴の周期がコンドラチェフ、上着の周期がクズネッツかジュグラ―、そしてパンツの周期がキチン、のようなです。そう考えると、(スーツはスーツでもちろんいいのですが)ジャケパンスタイルを意識した方が、(コーディネートという面よりも)時間軸で使い回しがきくんではないかと。ジャケパンで揃え、パンツのトレンドがさすがに変わってきた頃に、ジャケットはそのままで、パンツを買い換える、と。パーマは2回か3回に1回、みたいな。ジャケパンスタイルはこのところ一般的ですし、物理的にもパンツの方が上着より消耗も早いのでこれは一石二鳥な効用があるのではと考えています。

昔はパンツのブランドというと、ロータとインコテックスぐらいでしたが、その後パンタローネが出て、最近はPT01等ブランド数は増えてきております。加えてブリオーニパープルレーベルも単品でパンツを出しており、今は選択の幅はほぼ無限ではないでしょうか。

話は変わりますが、イタリアでコートをオーダーするとスーツより高いと思います。説明は受けるのですが、何回聞いてもおなかに落ちないのですぐ忘れてしまい、未だ不思議に思っています。「(手間として)丈の長いジャケットとどう違うんだろう」、「ジャケット代プラスアルファでは無理なんだろうか」、「もしかして生地代?」等々です。(すみません、無知です。)

それで一番不思議なのが「じゃあパンツの値段ってどうなっているのか」ということです。スーツは上着とパンツの値段の合計ですからジャケットの値段はそれより安いはずで、その合計金額より(丈の長いジャケットみたいな)コート単品の値段の方が高いと。加えてだいたいどこのサルトもパンツは外注のようで、外注ということは、代金をサルトが支払っている(最終的には我々ですが)わけで、本来スーツ価格に占めるパンツは割高になると考えるのが普通、と思います。

ですが「たまにはスーツ注文しろよ」と言われ、付き合いなので「いいよ」と値段聞くと、(高くて)きついので「ジャケットでもいい?」と答えると「いいけどあんまり変わらないよ」と。で、確かにそんなには変わらないし、「別々でも着れるし」とか言われて結局スーツを注文してしまう。そして別々で着ることは一度もないという「スミズーラあるある」も多々ありました。

要するにパンツの値段ってもともと結構安いのではないかと。ナポリの某工房が治安の悪い地区で頑張っているのも、これまでパンツ専業メーカーが少なかったのも、もしかしたらそういう理由なのかもしれません。と思って、あらためて手持ちのパンツを裏返して見てみると、結構やっつけ感否めないと思ったものでした。「アイロンワークでS字を出す」、「後ろ吊って動きを出す」、、、あんまりわかりませんでした。ここ数年、パンツ専業メーカーが増えている(もともとあったんでしょうけど)のは、市場が膨らんで数量出るようになったことと単価が上がりリスクを取れるようになった結果ではないでしょうか。単純な値上げはきついものがありますが、単価が上がったことでこれまでやりたくても出来なかったことが出来るようになったのであれば、それはむしろ大歓迎です。

我々としましては、格好いいパンツを出してくれればありがたいわけです。シャツは直接肌に触れる上、ごまかしが効かないので、いいものを着たいと書きましたが、パンツは、素材も重要ですが、それよりも脚を長く見せてくれたり、ある程度のトレンド感をお願いしたいと思っています。一方で上着に比べ、酷使されますし、トレンドの影響を受けるので、価格にはシビアに行きたいものです。もともと安かったようなのでなおさらです。今スミズーラでパンツ作ると5~10万、既製品だと3~10万ぐらいでしょうか。上の価格帯はなかなか手を出しにくいと思います。当店では、ブリオーニやパープルレーベルの7~10万クラスの仕付け糸の付いた単品パンツ(未使用品)を2万円強でお出ししております。サイズ46、48を中心に20本ぐらいご用意していますので、お試し買い、大人買い、色々とご検討いただき、「パーマは2、3回に1回のジャケパン作戦」をぜひご検討ください。

 

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。
*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。