当店別注のネクタイ

こんにちは、Tango245です。
本日は当店別注のネクタイについてお話しします。ネクタイは結構簡単にできるんじゃないか、コストも安いんじゃないか、と思っておりました。ですが別注品を手掛けるにあたり少し勉強したのですが、これがなかなか手ごわい存在でありました。

100円ショップに売っているぐらいですから、安く上げようとすると、多分果てしなく安く上がると思います。ですがきっちり作ると大変でありまして、例えば、7ピエゲだと70-80 cm四方の生地が必要で、ウールでもロロピアーナクラスだと数千円後半からそれ以上、上質のシルクだと1万円以上してしまいます。またミシンで走ればすぐ縫えてしまいますが、本当のハンドロールで縫えば4,5時間はかかります。よってセッテピエゲをフルハンドで制作すると単純に原価だけでも2万円前後してしまい、これにメーカーの利益やセレクトショップの利益が加算されると小売価格は軽く数万円半ば、あるいは後半の値付けになってしまうわけです。(ざっくりです)

当店といたしましては、ネクタイについて、「締める機会が少なくなったからこそいいものを、、」とお話ししておりますので、安く上げるわけにはいきません。ですが数万円半ばのお代をいただくわけにもいきません(ブリオーニのネクタイを1万円で、ゼニアの未使用ジャケットやスーツは6万円ベルベストやチフォネリの未使用ジャケットでも7万円で出しておりますし)。一方でパーツは生地と縫い糸、製造工程もハンドメイドなので設備は針のみ、あとは4、5時間の人件費と、シンプルすぎてコストダウンの余地はありません。良い品をお届けするのは、靴やスーツに勝るとも劣らないくらい手ごわい代物であります。

ネクタイで有名なのは、ステファノリッチやブリオーニのプリーツタイ、アンジェロフスコやキトンのセッテピアゲ、エルメスやかつてのアルニスのプリントタイといったところでしょうか。プリーツタイは日本人には、「やりすぎ感」が出るでしょうし、キトンやエルメスでさえも、手触りは昔とはもはや違い、芯地との相性もイマイチな感じがします。ということで、当店といたしましては、日本人らしくシンプルに、かつ基本的には「芯地なし」で行きます。ネクタイの起源は17世紀、クロアチア兵が首に巻いていたスカーフが原型(そういう意味ではネクタイも軍物と言えるのかもしれません)といわれますので、「芯地なし」は、より原型に寄せた物ともいえます。その芯地なしで得られるものは軽やかさ、失うものはボリュームで、そのボリュームを確保するため、当店では、試作を繰り返し(生地感との兼ね合いで変える場合もありますが)基本的にセッテピエゲの2倍の14ピエゲで作るようにしています。

またネクタイのパーツは、メーカーによって違いますが、大剣、なかはぎ、小剣の3パーツで構成したものと、大剣、小剣の2パーツで構成したものがあります。3パーツのネクタイで(ミヌッチ氏のような)小剣ずらしをすると、なかはぎと小剣の接合部が見えてしまいます。当店では軽やかさ重視ですので、小剣ずらしを意識(ですので小剣通しがをつけておりません)しておりますので、当然2パーツ使用で、接合部は襟の中に隠れるよう設計しております。

製造は針と糸しか使わない完全ハンドメイドで製作していただいております。芯地がないので裏地もなく、結果として縁の処理が必要になります。手間がかかるのはこの部分のハンドロールです。多くは「三つ巻き縫い」という縫い方で、生地を二回折って縫い上げる方法で、これは多少の裁断の心得があれば対応できるようです。一方当店の処理は、実際に「こより」を作りながら糸を通していく方法で、エルメスでは「ルロタージュ」と言われ、専門職人が担当する処理を施しております。この「ルロタージュ」、手間はかかりますが、剣先の見た目が違ってきます。また当店では剣先だけではなく、織り込んでいる部分もすべてこの手法で処理(約3m)しており、これでネクタイにコシも入れております。

ネクタイにルロタージュを施しているメーカーは、世界でも片手程度と思います。加えてセッテピアゲの倍の14ピエゲで製作し、しかも分業体制ではなく一人の職人さんが最後まで作る丸縫いで、販売数量は限られます。またハウススタイルとさせていただく生地と無地の生地は複数本販売しますが、その他の柄物は多くてせいぜい2,3本、ほとんどの物は -ONE&ONLY- で、人と被ることはまずないと思います。当初1年は1万円台でお届けいたしますので、ネクタイにしっとり感と軽やかさをお求めのお客様はぜひ一度お手に取っていただければと思います。(実際の販売は春先を予定しております。)

大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。