こんにちは、Tango245です。
英国のテーラーというと、ハンツマン、ヘンリープール、アンダーソン&シェパードが3強かと思います。イタリアでいうとグイド・ボージやカラチェニ、カンパーニャ、パニコあたり、フランスでは、カンプスとそこの出身のスマルトとなりますでしょうか。個人的には、そこに、チフォネリや今は亡きアルニスも入るかと思います。ですがこれらのテーラーやサルト、アトリエの多くは、ビスポーク物もあればファクトリー物も、あるいは国内のライセンス物もあり、それらがひと塊となってそのブランドを形成しております。
チフォネリで言いますと、エルメスのシュール・ムジュール(ス・ミズーラ)も請け負っていたようなビスポーク物があって、その周りにカルーソやベルベストとかが請け負っているファクトリー物の既製品があって、それとは別に日本の百貨店で展開されているような日本製のライセンス生産物があります。かつて「左岸のアルニス、右岸のエルメス」と称されたアルニスも、これもビスポーク物と同じくカルーソやイザイアが請け負っている既製品があるわけであります。
当然価格は違っており、ビスポークで100万円前後、別のファクトリーの既成品で30万前後、ライセンス生産品で20万円前後という感じでしょうか。ブランド側としましては、資本効率が追及される昨今、より売上の増大が狙え、かつ利益率の高いビジネスにシフトしたいという意向が多かれ少なかれ働くのは否めませんので、各社の戦略の違いはあるにしても、概ねこういった傾向があるのだと思われます。
問題は、そのブランドの本来の価値はどこにあるのか、という点であります。熟練した職人の手仕事に価値があるのか、あるいフィッシュマウスやタグ等、いわゆるアイコン的な意匠やタグに価値があるのか、と。熟練した職人の手仕事に価値を見出すのなら、別のファクトリーが製作した既製品やライセンス生産の既製品に(そのブランドの)価値はないと思いますし、アイコン的な意匠やタグに価値を求めるのであれば、何も100万円以上のお金や何ケ月もの期間や手間を使ってビスポークを注文するより、2ケ月程度の国内ライセンス物や、すぐに買える吊るしのファクトリー物のほうがありがたいわけであります。
その何に価値を見出だすかというのは、人それぞれであります。タグにあこがれる気持ちは店主も否定できません。ですが、ファクトリー物を製造しているのがカルーソ(多分)であれば、そのスーツはカルーソ水準を超えてはいないはずであります。店主はカルーソのスーツのコストパフォーマンスは高いと考えております。10万円そこそこであの水準はありがたいと思いますが、30万円の価値はどうかな、と思っています。30万出すならカルーソよりベルベスト買う(いや、それなら当店で未使用のブリオーニ、18万円で、、、)でしょうし。よってカルーソが作っている(と思われる)イタリア製のチフォネリのスーツの着心地に30万円の価値はやはり微妙で、30万円で売られるその値段には、カルーソがチフォネリ仕様で作るチフォネリらしさとチフォネリのタグ代に価格の半分ぐらいが入っているということになります。そのタグもビスポークと吊るしは大概の場合は違います。それでも「100万払うよりは、、、」という考えもありますが、なんか「もやもや感」が拭えないのであります。好きなブランドだけにちょっと微妙です。同様に考えると国内ライセンス物に至っては、着心地は数万円の水準に、らしさとタグ、で20万円というところでしょうか。(すみません、勝手な判断です。)
こう書くと、なんか否定的な感じになっていますが、店主は、イタリア製のアルニスもチフォネリも相当気に入っております。問題は、そのアトリエ仕様のらしさとタグにいくら払えるか、というバランスであります。キトンが請け負って30万なら買いますし、ベルベストが請け負って30万円でも買うと思います。実際、昔はエディモネッティとかティンカーティのスーツとかはキトンが作っておりましたし、「そんな時代もあった」わけで、ですがカルーソだとバレちゃうと原価わかっちゃうので、好きは好きなんですがモヤモヤしてしまうということであります。(繰り返しですがカルーソのコストパフォーマンスは高いと思っています)
ということで、当店の価格設定、アルニスやチフォネリのファクトリー物(未使用品)につきまして、カルーソの価格を意識してつけております。アルニスらしさやチフォネリらしさ、そしてタグ代は、乗せておりません。それらはサービスです。カルーソの10万円そこそこの品をセールで購入したという前提で7万円としています。まずは、コルビジェやピカソ、ヘミングウエイに愛されたアルニスらしさ(ってもアルニスはもうありませんが)、「100m先からでもわかる」と言われたチフォネリらしさを、カルーソのセール価格で、ぜひお試しいただければと考えております。アルニスやチフォネリのタグはやはり別格感がありますので。
一方、ユーズドにはなってしまいますが、冒頭でご紹介した雲上アトリエの本丸と言える、ビスポーク物も在庫しております。ぜひ一度羽織っていただき、ファクトリー物と比べていただき100万円の価値があるのかどうか、ビスポークの価値があるのかどうか、ファクトリー物でも十分なのか、ご判断いただければ、と存じます。やはりビスポークということであれば、各アトリエ、頼りになる人をご紹介させていただきますし、(100万円は出せないものの)ファクトリー物は似て非なる物であれば当店のユーズドをご検討ください。それぞれ2,3着ずつしかありませんが、サイズが合えばお買い得です。自分がビスポークしたのもありますが、(どの道全部は着れないので)サイズ関係なしで購入したユーズド品もありますので、サイズは割とバラけています。(個人的に雲上の雲上はカンプスでしょうか。)
大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらとこちら、こちらもお読みいただければありがたいです。