こんにちは、Tango245です。
怠け者対決では、イタリアだろうがスペインだろうが世界のどこへ出て行っても負ける気がしない店主ですが、それでもさすがに4月から休んでいますと、仕事をしたくなってきて、「6月は垂直の3乗立上げ!」とか言ったりもしましたが、そろそろ休みも終わりということになると、「やっぱりもっと休みたい」となって、そうこうしているうちに緊急事態宣言再延長で「よっしゃぁ」と思いきや、零細の古着屋は働いても影響なし!ということで、結局自分は休みたいのか、働きたいのか、よくわからなくなっている今日この頃であります。実際古着の販売は国民総生産にはカウントされないらしく、じゃあ自分は毎日何しているんやと、スティングのイングリッシュマン・イン・ニューヨークの気分で、気を取り直してこんな時こそブログで情報発信!と思いましたが、4月の4本に対し、5月は2本、6月もなんとか1本とペースは衰えるばかりで、やはり怠け者以外の何物でもありません。
そんな折、お願いしていたネクタイ生地が届きました。ふんわりと柔らかい感じの仕上がりであります。当店ネクタイにつきましては、プリント物はデッドストックを放出し、織りは別注で指4本の太刀魚のようにコシのある物をご提供したいと考えているので、開けたときは一瞬「おいおい」と思いましたが、毎日見ているとこれはこれで優しくてアリかもとも思ったりもしています。実は今までお願いしていた業者さんと連絡が取れなくなり、地元の商工会議所さんに聞いて、何件か教えていただき訪ねて行った一社さんにお願いしたのですが、そうこうしているうちに前の業者さんと連絡がつき、こちらでも以前の「コシありバージョン」で再度お願いすることにしました。
それでその注文の詳細を詰めている際に、デッドストックのお話をいただき、詰めていた生地の話はどこへやら、そのデッドストックを、例によってお願いし、分けていただける分は全部回してもらうことになりました。でそのデッドストックは、なんと「天然の蚕から作っとるんや」とのことなんです。
正直あんまりわかっていないのですが、昔のプリント物のシルクと今のプリント物のシルクの明らかな質感の違い(これはわかります。一目瞭然です。)はその製法にあって、でその製法の違いは、働き方改革の走りによるものと理解しているのですが、その昔ながらのキツイ製法で頑張ってきた日本の生糸産業は世界を席巻、エルメスやカルロリーバも富岡製糸場から買っていたというのは、割と有名な話です。ですがその世界を席巻した生糸のもととなる蚕は、わかりやすくいうと養殖ものだそうで、60年代の日本の輸出の8割以上が生糸と蚕と言われていますから、まあ養殖でないと計画的にかつ大量には作れないわけです。
ですがその一方で、当然蚕にも天然なやつがいるはずで、今回のデッドストックは、その天然ものでつくってあるとのことであります。現代の推奨される生産管理プロセスで、時間や手間をコスト計算すると、ネクタイの値段はもちろん、シャツの値段も超越し、その辺のスーツの値段になること必至であります。
「天然ものと養殖ものどちらがいいか」問題は、「だからどうした?」的な問題で、もっというと、あと10年もすれば、ほとんどすべての分野で天然ものなんて絶滅しているか、すっぽんのように「養殖の方が安心」的な世の中になっていると思います。ですが、その一方で、例えばですが、ビキューナが人の住めない高地ではなく、人も住める低地で安全に養殖されることで、彼らもそれに順応、あんまり毛を蓄える必要もなく、むしろ低地で彼らには暑いので適応するために毛は蓄えなくなっているはずであります。また毛の質も見た目は敵がいないのでいいですが、どこかほんわかした耐久性のないものになるのは、致し方ないと思います。実際、昔の上質な天然物は気合が違います。50~60年前の物でも凛としています。ということで、「そんなんどうでもいい」問題かもしれませんが、当店としては、洋品はビジネスマンの皆様の商売道具でありますので、いろいろとこだわっていきたいところなわけであります。
それで話をさらに聞いていると、今回のそのデッドストック、グレナデンシルクであります。グレナデンというのは、あるフレスコ織機の名前で、ニットタイみたいな感じのやつになるのですが、ニットタイは編み、こっちは織りで、またその織機もいまは製造されていないらしく、こちらも現存するだけの絶滅危惧種であります。007でショーンコネリーがよくつけていた奴です。例のフランス人も、「シャルベのグレナディンシルクのタイがあったら値段はいいから回してくれ」と言うくらいの素材で、特にこれからの季節は最高です。また今回の生地、無地が数色あり、また無地だけではなく、レジメンタルやレース状のペイズリー柄もあるとのこと、もはやいったいどうなっているのかわかりませんが、とりあえず次の日代金を振り込んで、確保しておきました。
ということで、使用頻度が激減のネクタイですが、天然の蚕から作った糸をグレナディンで織ったデッドストックの生地で作る、ハンドロールバキバキで、閂止めを超えてかなり上まで折った14ピエゲの、ネジの外れた別注ネクタイ(長い!)、なんとかネクタイの値段で出しますので何本かいかがでしょうか。今なら選り取り見取り、先日インスタやブログでアップした、コスタのジャケットと組み合わせれば、もうどうなっても「後悔などあろうはずがない」です。もちろん当店別注の通常のコシありバージョンもcoming soon ですので、デッドストック、コシ無しバージョンとともによろしくお願いいたします。
大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらとこちらも読みいただければありがたいです。*コーヒーのご提供につきましてはコロナ蔓延を鑑み、現状自粛させていただいております。