ミラノのはずれのハイクラス

こんにちは、Tango245です。
昔、ミラノのはずれに、ハイクラスというケリーやバーキンのコピー商品を製造販売している小さな店がありました。元エルメスの職人が作るバッグということで日本で爆発的に人気になり、いろいろな雑誌も「行くべき店」として取り上げました。40代以上のお客様ならご記憶にあるかと思います。もしかしたらまだ営業しているのかもしれません。今でもヤフオク等では、「エルメス公認の、、、、」と解説され、少なからず出品されています。

ですがこのハイクラスのバッグ、職人さんはもしかしたらエルメス出身かもしれませんが、ミシン縫いで革も薄く、ケリーやバーキンとは似ても似つかぬ代物だったように記憶しています。イタリア的にちょっと挨拶程度に軽く言ったらそれが一人歩きしてしまい、えらいことになってしまって、むしろ一番困ったのはその店主ご本人だったんじゃないでしょうか。「そんなん見りゃわかるやん、冗談だって。どこがエルメスやねん、誰がエルメスやねん」と。

このハイクラスの話は論外として、ロブやクレバリーがアウトワーカーを使うように、エルメスもアウトワーカーを使っていた(いる)ようです。それで、近年エルメスはそういった工房を買収してきております。時折ヤフオク等でそういった工房製のほとんど使用感のない品が出品され、その旨の説明も書かれています。なかには手縫いで素材も良さそうな物もあります。ですが、コピー商品とみなされてしまうのか、本物の定価から見れば捨て値のような値段で取引されておりました。実際、多くの工房がエルメスとのつながりをほのめかし、本当にエルメスのアウトワーカーであったか否かは微妙な部分もありますし、革の質やハンドかどうかは実物を見て見ないとわかりませんので、安いとはいえその言葉に乗るわけにはいきません。

ですがそれが本当にエルメスのアウトワーカーが過去に作ったバーキンモデルであるなら、なかなか考えさせられます。品物の価値は市場が決めるわけで、捨て値でしか取引されないのであれば、それが実際の価値であります。ですが、エルメスのアウトワーカーとして実際に作っていて、今やエルメスに吸収されているわけですから、そこが作っていた品質は、エルメス品質と言えます。というよりもかつてここで作られた商品にエルメスの刻印が押され、販売されていたということにもなります。そうなるとまさに違いは刻印があるかないかであります。実際当店にも、エルメス物もアウトワーカー物もいくつかあるのですが、品質は当たり前ですがどっこいです。仕様が違う部分もあるにはありますが、劣っているのではなく、わざとそうしている感じです。

もちろん刻印があるかないかは、消費者にとって大きな問題です。ですが、同じ品質の2品、例えばボックスカーフの中古で、かたや百万円、かたやその数十分の一であります。クロコやオーストリッチならその差は百分の一、あるいはそれ以上と大きくなります。またエルメスといえども、素材の枯渇は深刻で、もはやボックスカーフの既製品は展開されていません。エルメスの正規品の型押しレザーと正真正銘のアウトワーカーが作ったボックスカーフ、将来は悩みどころとなっているのかもしれません。もっと言いますと、本物とワザと見えるように持っているよりも、さりげなく(品質が同じ)アウトワーカー物を持っているほうが、お洒落な時代がそのうち来るような気もします。大事なのは品質で、品質が同じなら安価なほうがスマートですから。

と、そんなことを考えているうち、なんかジワジワと値段が上がってきておりまして、以前のような値段では買えなくなってきました。刻印の件はひとまず置いて、ごく単純に考えて、かつてエルメスのアウトワーカーで今やエルメスに買収されてしまった工房が昔作ったクロコやオーストリッチのハンドメイドの逸品が、1、2万円(ボックスカーフなら数千円)で買えると考えれば、「それも有りかもしれないけど、、」どころか、今のうちに押さえておくべき逸品なのかもしれません。こういうのを掘り出し物というのかもしれません。靴に当てはめれば昔ロブのアウトワーカーだったボノーラがハンドソーンで作っていた使用感のほとんどないボックスカーフが数千円、クロコでも2,3万円でザクザクしているような。ジャケットに当てはめれば、昔ロンドンハウスのアウトワーカーでスミズーラを作っていたフェリーチェの使用感のほとんどないカシミア混のジャケットが数千円、ビキューナでも5,6万円でザクザクしているような感じではないでしょうか。ロブの刻印もロンドンハウスのタグもないですけど、我々はそんなん別にいりませんよね。でもエルメスは別格! そうかもしれません。

大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。