(大御所の)店員さん

こんにちはTango245です。
今もセレクトショップや路面店で一目置かれている店舗や店員の皆様は数多くいらっしゃるかと思いますが、昔のお店や人も強烈でありました。大阪のアリストクラテコはシャツのボタンの厚みとボタンホールの関係に1時間ぐらいは教えていただきました。その時買ったベルトは30年近くたった今でも現役バリバリです。代官山にあった頃のエビスヤテーラーでは店員さんがお客にマンツーマンでついてくれて、手が空いていなければドアが閉まっていて、お客は店内に入ることができず、外で順番待ちしておりました。以下は店員さん(といっても皆さま大御所で恐れ多いですが)のお話で、全て古い話で恐縮ですが、ご興味あればお読みいただければありがたいです。

「重厚感」で店主が記憶に残るのは、やはり皆様もご存知の信濃屋の白井さんです。30年近く前でもかなり敷居が高く、元町本店(たしか本店)の一階は百貨店風のよくある婦人服売り場でしたが、地下に降りるとそこはクラシコワールド炸裂の別世界で、そこで白井さんが何かのお礼状とか招待状を直筆で書かれていたりすると、もう息苦しくなるほどでありました。クラシコブームの前から、バルベラとかアットリーニとかラタンジとか扱っていたみたいですから、格が違うというか反則というかですけど。それでも、この前、横浜に行ったので元町歩いていて、そういえば信濃屋この辺りじゃなかったかな?と思って、気にしながら歩いたのですが見つからなかったので、近くの洋服屋で「信濃屋さんどこでしたっけ」と聞くと「いやわかりませんけど何屋さんですか?」と言われ、意識飛びました。元町で洋服屋していて信濃屋知らないのか、もしかしたら閉店してしまったのかもしれない、いや閉店したなら閉店したと言ってくれるだろう、と色々と考えさせられました。

「センス」で記憶に残るのは、これも皆様ご存知の当時タイユアタイのミヌッチ氏とリーギ氏でしょうか。ある意味シャツ、そしてネクタイが一番大事ということを教えていただきました。このお二方は引き出しの数が違いましたよね。だいたいネクタイの結び目の大きさを考慮して、結果的に小剣が長くなってもそっちの方が実際格好よく見えるなんていうのは考えられませんでした。余った部分をパンツに入れるのもシャツに入れるのもあまり格好良くないですが、細い方が長かったら当時はものすごい違和感があるものでした。自分は今でも違和感あるのですが、彼らがするとそれが大丈夫、というか、それの方が格好いいかも、と。ファッションに対するものすごい熱量を感じました。それで「参りました」で、「シャツとネクタイ、いくつか選んでください」とお願いしました(まあいつもこうなのですが)が、向こうも「やれやれ。そこじゃないんだけどな」っていう感じだったと思います。そういえばシニスカルキのオーナーもシャツのボタンを二つ外している感じが格好良かったです。

「渋さ」では、名前が思い出せないのですが、オールドイングランド本店の当時70歳以上とみられる店員さんが記憶に残っています。噂には聞いていたのですが、自分がお邪魔した時(これも20年以上前)は、白い麻のスーツにコットンと茶革のコンビのフルブローグに髭生やして(当時日本で髭はビジネスではまだNGでした)、メチャ渋だったので、何とか声をかけてもらおうと周りをウロチョロしたものです。店主はこれ以来、髭を生やし、麻のスーツを買い、コンビの靴を物色するようになりました。この時は、夏ですけどオリジナルのカシミア100%のソックスを大人買いしたのですが、「おっ、そうくるか」と、「営業」かもしれませんがいい顔をしてくれた気がしたので、少し嬉しかったです。(やはり大人買いはわかり合えるのかも、です。)まだ商品は当店にデッドストックでありますので、「営業」だったかどうか、ご興味あればお声掛け下さい。ちなみにカシミア100%のソックスってネジ外れている感(なにせすぐ破れる)があって結構いいです。字余りですが少し佐野元春風に「カシミアのソックスにロシアンカーフのシューズ」、それでコヒーバふかしながらラフロイグ空けたら、マジ卍です。

「営業」で言いますと、今もあるかどうかはわかりませんが、ボストンに昔ルイスという、昔でいうとバーニーズ、今でいうと伊勢丹メンズのようなセレクトショップがありました。そんな店とは知らずポロシャツ(どうでもいいですけど一応フレラコ)、短パンで入ってしまい、案の定というかネイビーのダブルのスーツを着た身体鍛えた黒人が立っていまして、これは完無視だな、と思いきや、スーツ姿の白人を尻目にフルケアの歓待を受け、気分良く一通り購入させていただきました。その10数年後、今度は自分はスーツで行きましたが、Tシャツ短パンの中国人のお客が歓待を受けていて(多分その人も気分よく一通りは買ったと思います)、自分は完無視されました。お金使いそうな人間を見分ける嗅覚と営業センスは素晴らしいものがあります。余談ですが、ボストンには当時(これも今あるかはわかりません)ファイリーンという百貨店があり、その地下にファイリーンベースメントというアウトレットがありました。チェスターバレーやパープルレーベルに加えて、なんとハンツマンのビスポークとかが何故か5万円とかで置いてあり、店主はここが、(かつてキトン、アットリーニのザクザクポイントだった)ミラノのイルサルバジェンテとともに世界二大お気に入りアウトレットで、ボストンに行く際は必ず寄っていました。

「格好よさ」だと、30年ぐらい前にバーニーズニューヨークのニューヨーク本店にいた日本人(多分)の店員さんが最高に格好良かったです。最近は路線が変わってしまった感のあるバーニーズですが、1990年代は、海外ドラマのSUITSでいうと、カンパーニャやアットリーニ、キトン等がいわばパートナーでいい場所を占領していて、ベルベストやイザイア等がアソシエイツで平場、それ以外はパラリーガル的な扱いの敷居の高い店でありました。しかもそのニューヨークの本店に日本人がフロアで接客されておりまして、その姿も他の現地の店員に負けていない、というより勝っている感じでありました。今ならともかく30年前の話です。二世なのか、それとも伊勢丹からの派遣なのか、わかりませんが、こちらが勝手にガッツポーズをしてしまいました。今でいうと全米オープンで大阪なおみ選手を見るような感じでしょうか。

最近の話はすぐ忘れますが、昔の話はよく覚えています。昔の話でよろしければ、笑える話、笑えない話、色々とお話できますので、遊びにきていただければ嬉しいです。それと「感謝」という意味で、お一人ご紹介したいので、次回書かせていただきます。

大変恐縮ではありますが、当店は不定期営業で、また倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。またすでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。
*当店につきましてはこちらこちらこちらもお読みいただければありがたいです。