ピピピ、ピーコートありますか。

こんにちは、Tango245です。
先日、ブログで「クロード・ルソーが2着入荷しています」と書きましたが、「クロード・ルソーとは」というお話をいただきましたので、書かせていただきます。おかげさまで今月4本目、ありがとうございます。(だいたいあっているはずですが、細部間違っている場合はすみません。)

クロード・ルソー、今はありませんが、フランスの雲上テーラーの一つであります。もともとはジョセフ・カンプスの弟子で、老舗中の老舗、メゾン・ド・カンプスに勤めておりました。フランスにも、フランチェスコ・スマルト、カンプス・デ・ルカ、マックス・エブゼリン、アンリ・アーバン、ガブリエル・ゴンザレス、アルニス、チフォネリ等、イギリスやイタリアと同様、雲上サルトが存在しておりまして、少なくとも価格の面ではどこも両国を凌ぐ値付けになっているかと思います。実際、スマルトやカンプスは、入るのに異様な圧があり、セビルロウなんかよりかなり怯みます。なのでだいぶカジュアル感のあるアルニスで、軽くかましてやろうと思って、(「森の番人」じゃなく)ピーコートのビスポークとか聞くと、日本円で100万円と言われ、「今日のところはこれぐらいで勘弁してやるわ」と一言残し1階(既製品)に降りていくわけです。その1階では「ピピピ、ピーコートとかありますか?」、今度はかなり下手に出てしまうのが悲しいですが、20万円とか言われて、少し安心し、シャツとセッテピエゲいくつか買っても、全然おつりがくるので急に強気に転じ、今日のディナーは、リシュブルかラ・ターシェ、場合によってはロマネコンティいったるわ(当時です)と、非常にわかりやすい店主であります。20万円でもかなり高いわけですし、そもそも100万円も使う気はないはずなので、なんで安心してしまうのかがわかりません。

で、その圧が異様なカンプスがどのくらい老舗かというと、フランスには、アンドレ・バルドー、ソクラテス、ディ・ティナ、ガストン・ウォルテナーで形成される、ワインで言うと5大シャトー(適当です)のような「Groupe des Cinq」と呼ばれるいう集団があり、彼もその一角で、パーレビ国王のスーツとかを縫っておりました。モロッコの元国王、ハッサン2世が纏うダンディーなスーツはフランチェスコ・スマルト製というのは有名な話ですが、スマルト氏ももともとはメゾン・ド・カンプスの出身ですし、ハッサン2世の父親?であるモハメド5世のスーツはカンプス製で、クロード・ルソーと、同じくカンプスの弟子のアンリ・アーバンが、国王のスーツを二人でメイドの部屋で縫っていたといわれています。ちなみに当ブログで時折登場する、赤い彗星シャーの異名を取る?、マックス・エブゼリンも後年このグループに入ることになります。

ですがこれも景気の波、職人の勢いや高齢化の問題等から徐々に姿を変えていきます。フランチェスコ・スマルトはカンプスから62年に独立、その後ハッサン2世の注文等をバックに拡大しますが、一方のメゾン・ド・カンプスの経営状況は芳しくなかったのか、69年には、メゾン・ド・ルカと合併し、カンプス・ド・ルカとなり、またその前後、アンリ・アーバンは67年に独立、クロード・ルソーも70年に独立することになります。その後はチフォネリが台頭し、2000年にクロード・ルソーを2008年にガブリエル・ゴンザレスをそれぞれ吸収、またアルニスは2012年にベルルッティの傘下となってしまいます。

そんななか本題のクロード・ルソーですが、そのカンプスのヘッドカッターを務め、独立後も名声を持続、それゆえにチフォネリに吸収されるわけですが、チフォネリで有名な、(100m先からでもわかる)コンケーブドショルダーやフィッシュマウスは、彼によるものとも言われています。

当店のミシンを一切使わない別注スーツを願してる職人さんも、当店にお越しの際はルソーのジャケットよくチェックされます。例のフランス人も「スーツはルソーがあればいい」とか言っていますので、サムシングを感じるのは自分だけではないようです。白洲次郎氏からのヘンリープール、風を愛するアニエッリからのカラチェニ、そしてフランスメゾンのDNAが詰まるクロード・ルソーは、我々、日本の沼の住民としても外せないアイテムのような気がしています。ヘンリー・プールは巷に結構ありますし、カラチェニもそこそこ見ますが、クロード・ルソーはまず見ません。レア度で言うと、刻印無しのロシアンカーフやビキューナを大きく超えて、アイリッシュリネンも軽く超えて、(手前味噌ですが)あること自体がおかしいくらいなので、よろしくお願いいたします。もともとある、サイズ48相当のスーツの他、今回のジャケットがそれぞれサイズ46と48相当で1着ずつであります。

シャツの受注会、お問い合わせありがとうございました。8月のご予約は締め切りとさせていただきます。次回9月も開催する予定ですので、引き続きよろしくお願いいたします。

大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらも読みいただければありがたいです。*コーヒーのご提供につきましてはコロナ蔓延を鑑み、現状自粛させていただいております。