一足入魂!

こんにちは、Tango245です。
今や日本を代表する靴職人の人が、英国で勤務されていた頃、そこにいた伝説の靴職人から、「それにいつまで時間かけているんだ、と叱られた」というようなお話を、昔、何かの記事で読んだことがあります。店主がそれを読んだ時、何かマズいものを読んだと違和感を感じつつ、「それは考えてはいけない」と勝手にシャットダウン、自分で脳の奥の方に封印しました。ですがその後、その封印も徐々に溶け出し、この言葉について考えるようになったわけです。

まず、我々が、「包み込むような履き心地」、「美しいアーチやステッチ」、「一生の伴侶」等々、ビスポーク靴に掛ける想いは、ある種、工芸品に近いレベルを想っているわけですが、かの国の職人、伝説の職人でさえ、そこまでは思っていないということであります。もちろん、既製品のレベルとはちがいますが、少なくとも生産管理の枠内にある高級品で、工芸品などとは思っていないということでしょう。我々がそう思っていたのに先方はそう思ってはいなかった。これは悲しくも哀しい、やるせない事態であります。

もちろん、店主はコークストリート時代のクレバリー等、本当に美しいと思っており、生産管理の枠内で、あそこまでの物をごくごく普通に作るというのはむしろ恐るべしと言えます。またいいもの作ろうと思っていたに違いないと信じております。そう思っていなければああいうものは作れないと思います。なので今の英国のビスポーク価格はすさまじいですが、それでもあのクオリティーを出してくれるなら自分はギリ納得ですし、量産品だろうが工芸品だろうがそんなカテゴリー分けなどどうでもいいと思っています。ですが今のクオリティーであの価格は自分には無理で、おそらくは、よりいいものを作ろうという意識が、違う方向に行ってしまったんじゃないかと思っています。我々がいう昔の物はよかったというのはそういうところにあるような気がします。

さて我が方の日本ですが、その大御所に怒られた職人さんは、おそらく今も、「それにいつまでも時間かけている」のではないでしょうか。日本のほかの職人さんも、人それぞれではありますが、総じていうと時間かけていると思います。そう、日本は、いいか悪いかは別として、1足入魂!なのであります。もちろん時間かけたからと言っていいものができるわけではありません。しかしながら、時間かけないといいものができないのもそれは事実であります。

仮に一方が一足100万円。もう一方が50万円でかかる製作時間は前者の2,3倍。クオリティーが同じなら普通は後者を買います。店主はクオリティーは既に後者の方が高いと思っているので、前者を買う理由がありません。有名ブランドのタグの威力は厄介ですが、タグに頼ることが恥ずかしくなる世の中もそのうち来るのではないでしょうか。工程管理品と1足入魂の品、しかも価格は総じて半分、もう勝負はついているわけであります。ということで、ビンテージは欧州物、現行品は日本の物ということで、今後は皆様よろしくお願いいたします。また日本の職人の皆様、怯む必要はありません。物欲の波にのまれ散々散財してきた店主が言うのですから間違いはありません。折しも円安トレンドの折り、どんどん世界でご活躍ください。クオリティーは上なのですから価格も上で当然です。1足100万円、1着100万円などと言わす、150万円、200万円で靴やスーツを売りまくっていってください。何でしたら当店がピッティに持っていきます。燻ぶっているのならぜひご相談ください。自薦他薦問いません。

大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらも読みいただければありがたいです。*コーヒーのご提供につきましてはコロナ蔓延を鑑み、現状自粛させていただいております。