アイリッシュリネンその後

こんにちは、Tango245です。
昨年、ブログのなかで、究極の3品として、アイリッシュリネン、ロシアンカーフ、ビキューナを上げさせていただきました。すでにみなさま結構な量の洋服や靴を持ってしまっている一方で、買いたい商品もなかなかなく、物欲減退モードが蔓延する昨今でありますが、物欲の減退は、健康にも影響いたしますでよろしくありません。ですのでお手持ちの洋服は、ヤフオクやメルカリ等で減らして場所を確保、そして逸品を少しずつ揃えていかれるのはいかがでしょうかということで、例えばとして上記3品をご紹介させていただいた次第です。その後、当店にあるこの3品、程度のいい高額な商品からお買い上げいただけるという、ありがたい状況で、アイリッシュリネンのスーツ生地は現状完売しております。

リネンは、ざっくりいうと3工程あり、フラックスという原料を栽培・収穫する工程、それを紡績し糸にする工程、それを織って生地にする工程で、本来は、この3工程全てアイルランドで行われて初めてアイリッシュリネンとなるかと思いますが、現在フラックスは、フランスとベルギーが主流でアイルランドに農場はなく、紡績工程、織る工程は中国が主流のようであります。アイリッシュリネンというとハートマンズ社が有名で「リネンのロールスロイス」といわれていましたが、同社も2004年に廃業、また営業中もフランスやベルギーのフラックスを使用していたようです。アイルランドでは現在わずかに残った小さなメーカーが、アイリッシュリネンの組合を作っているのですが、その組合のアイリッシュリネンの定義も、上記3行程のうち、どこか1つの工程がアイルランドで行われていれば認定されるようなので、ちょっと違うのかもしれません。

アイリッシュリネンの魅力は、スーツの生地で言いますと、いぶし銀のような鈍い光沢感とコシにあり、いわゆるアイルランド的なという意味のアイリッシュリネンとは、凄みがちがいます。実際当店でも、スーツやジャケットをお探しでお越しいただいたほとんどのお客様が、アイリッシュリネンのスーツをお手に取っていただけます。光沢感や色目等、ああだこうだと説明の必要もなく、やはり存在感が違うようです。

この凄みの源泉は、アイルランドで栽培される原材料と湿式紡績機を使った紡績技術といわれています。ハートマンズ社倒産後、同社の機械は南アメリカに移転されるのですが、その企業も結局は倒産してしまっています。ということで、原料は現地では栽培されておらず、紡績技術も途絶えてしまっていますので、本当の意味でのアイリッシュリネンは、40-50年前頃のデッドストックまでさかのぼらないと意味がないと思われます。

またアイリッシュリネンのそもそもの魅力は、高番手にあるともいわれております。洋品で言いますと、チーフ類ということになりますでしょうか。当店チーフ類ですと20-30枚の在庫があります。また昔のハンドロールは超絶技巧ですので、その素材感と相まって存在感は大きいです。また写真をご覧いただきたいのですが、添付シールの最下段に25¢とか19¢とかの表示があります。おそらく値段だと思うのです。間違いなくリアルなアイリッシュリネンですが、いったいいつ頃の物かかなり雑ですが類推してみました。

ギブソンのギターにES335というのがあります。いわゆるセミアコの代表的なギターで、ラリーカールトンやリーリトナーを始め、国内でもパラシュートの、松田聖子の「夏の扉」や松山千春の「長い夜」のギターのリフを弾いた松原正樹の相方の今剛が愛用していましたが、なぜ335かというと1958年の発売当時335ドルだったからと言われております。現在ES335はヒスコレで約50万円、1ドル100円とすると5000ドル、約70年で15倍の上昇となります。一方のチーフですが、今だと一枚5000円くらいでしょうか。ドル100円だとすると50ドル、仮に一枚20¢だとすると250倍の上昇になります。ギターとチーフ比べるな、ヒスコレで比べるな、チーフ1枚5000円もするか、突っ込みどころは満載ですが、まあ超長期ならインフレ率の影響が一番大きいかもしれませんし、ヒスコレでなくスタンダードなモデルで比べるとさらに差は広がりますし、仮にチーフ一枚1000円で計算しても、50倍の上昇ですから、少なくとも1950年代はくだらないと考えております。ちなみに50倍を単純にリニア(70年で15倍)でさかのぼると約100年前、250倍だと約135年前となりますが、例えばハートマンズ社の設立は1835年ですので全然余裕です。ということで在庫限りではありますがご検討いただければ幸いです。ちなみに洗ったら溶けるかも思い、何枚か洗ってみましたが、全然大丈夫でした。さすが質実剛健なアイルランド製です。

大変恐縮ではありますが、当店、クレジトカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話にてご連絡いただきますようお願いいたします。店主の予定がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。ナポリの名店マリネラを真似てコーヒーをご用意しお待ち申し上げます。よろしくお願いいたします。*当店につきましてはこちらこちらも読みいただければありがたいです。コーヒーのご提供につきましてはコロナ蔓延を鑑み、現状自粛させていただいております。