ストライプシャツで(その1)

こんにちは、Tango245です。
下の写真はイタリアの有名シャツ工房の襟の部分です。襟の表裏の生地が縫われている断面を見ていただきたく、ストライプなのでわかりやすいのですが、ストライプの合わせが、首元と衿先部分でズレていませんか。一番首元に近い赤いラインはほぼほぼ同じ位置で縫われています。ですが中央部分から徐々にズレ始め、襟先部分の赤いラインはライン一本分ズレています。素材がウールと違いコットンですのでアイロンで生地は伸びません。なので運動会の行進のように、内側(外側?)を手で足踏み状態にしてシンクロさせているのだと思われます。

それでそれがどうしたですが、これによって表側の長さが短くなるので、この工房独特の、評価の高いロール感が出ているのだと思います。この部分はミシンで縫われ、ダダダダダ、と時間にしておよそ0.5秒ぐらいだと思われますが、その短い時間にこういう細かい技が入っているわけです。

いろいろとほかの工房の物を調べてみましたが、こういった技が入っているシャツは現行品ではイタリアでさえほとんどありません。ボタンホールや袖付けが手縫い時代のフライでも裏と表が残念ながらバッチリあってました。イタリアでさえそうなので、イギリス物やフランス物はおそらく全滅でしょう。聞いた話によると、欧州のシャツ業界には、襟専門の業者があって、高級品、廉価品とわず、割と一手に引き受けていたようですがすでに廃業してしまっているようで、そこが一部でこの技を駆使していたのであれば絶滅の危機、継承できていなければ2世代の空白の期間ができてしまい、もはやこれは伝統工芸の領域に入る、入っている、と見られます。

一方、今もそれが当たり前に施されている工房の、その伝統工芸も、職人の高齢化と資本の論理でそのうち絶滅してしまい、目ざとい人が見つけても「ズレてるし」とか「適当やなあ」とかいわれるのかもしれません。

逆にこれが独り歩きして、この技を使っていればいいシャツとかいうことになって、もともとはロール感を出すために自然発生的に施された施策がアイコンに変化、ズレの長さを競うとか、逆にそのやりすぎからくる過度なロール感を何かで補正するとか、本末転倒でだんだんと訳が分からなくなっていくのかもしれません。

ストライプのシャツもそうですが、チェックのシャツだとさらにいろいろな箇所の細かい施工が一目瞭然で、そういったことを一つ一つ盛り込みながら、当店の別注シャツは進めております。ソフトクローズで止めてた受注会も年明けから再開の予定ですので、絶滅危惧種にご興味のあるお客様はぜひよろしくお願いいたします。

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