こんにちは、欧州の逸品を通して皆さまにハピネスを届けるビスポークの古着店、tango245です。
皆さまは買い物の楽しみって何になりますか。もちろん欲しかった品物を手に入れることがその楽しみなわけですが、それに加えて、買い物前夜やお店に向かう道中、店員さんとの会話、帰って包みを開ける瞬間や部屋での試着等の全てが楽しみだと思います。で、その全ての楽しみをビスポーク(の古着)と既製品で比べると、引き出しの数というか、その懐の深さとというか、天井の高さが違うと当店は思っております。
ビスポークにはそれぞれオーダー主が存在します。欧州は階級社会で、服好きや靴好きがビスポークをしている割合は意外と低く、服や靴はビスポークするものだと思って誂えているケースの方が多いように感じます。そんな彼らに、「なんでいつもハンツマンなん?」って聞いても何を聞かれているのかわからないわけで、日本でも代々慶應で本人も慶應の学生に「なんで慶應なん?」って聞いても、そういうもんだと思っているだけなので答えようがないのと同じ感じです。
ですがウィンザー公のように、まれに上流階級にも服好き靴好きの変異種が生息しているようで、そんな彼らのオーダーがこれまたイカしてるんです。「こんなコードバン見たことある?」、「普通この色にこれ合わせる?」、「このストライプをこの幅で?」、「このチェック、バンチに入らへんで」、「この紺無地のスーツ、絶対只者じゃない」等々で店内勝手に盛り上がったりしてます。上質な素材を選ぶのはわかりますが、普通は絶対できないであろう派手なことを普通にやって、それでいてやり過ぎ感や頑張ってる感がなく、なんとも力の抜けたいい感じに仕上がっている。「いったいこのオーダー主は何者なんだ?」と。ピッティもこういうのを参考にすべきでは、と思います。
またこんな話も出てきます。当店にかつてのミラノの銘店バリーニのコードバンの外羽根のパンチドキャップトゥがありました。バリーニはサヴォイア家御用達の靴工房で、ボローニャの雲上サルト、グイドボージ氏が生前、靴でイチ押しだったところです。で、そのコードバン、圧が凄かったので清水ダイブで仕入れました。そして1,2年経った頃でしょうか。店主が現役最高の靴職人と見ているローマの某靴工房のオーナー(兼職人)がお忍びで当店に寄っていただいた際、この靴を見つけ、「なんでこの靴がここにあるんや」とテンション爆上がりのご様子。聞けばミラノのお金持ちが「とにかく世界一の靴を作れ」ということでバリーニにオーダー。世界中から極上素材を取り寄せ、バリーニ御大が製作するという流れで大騒ぎで完成したのがその靴で、当時彼はバリーニのアウトワークを請けていて出入りしていたので覚えているとのことでした。
また当店にある同じオーダー主の6足のガットも見つけ、「なんでこれもここにあるんや」と。聞けば彼はガットでもアウトワークを請けていて「これは俺が作ったやつや」、「この人がどんだけ金持ちか、お前知らんやろう」と言われました。そう言われましてもこっちはそんなもん知らんし、説明されてもなんか凄そうだけどイタリア語わからないのでわかりません。ですが店内はみんな笑顔で、なんとも言えないいい空気に包まれ、きっとこういう空気感が買い物の楽しみなんだろうな、と感じるわけであります。
そんなこんなでその靴職人(現役最高峰です)から認められた(かもしれない)当店ですが、帰り際に「こういうの(コードバンやガット)は、売り物にしないでお前がずっと持っていてくれ」と言われ、嬉しいやら悲しいやら複雑な心境でしたが、その後、お客様のお手元に嫁がせていただいたのは言うまでもありません。
そんなバリーニも風の噂ではマリネラに買収されてしまい当時の面影はなくなってしまったようですが、当店にはまだ数足、古き良き時代のものを数足在庫しておりますので、よろしければその雰囲気だけでも見てやってください。もちろんガットも多数在庫しておりますのでよろしくお願いいたします。
このようにビスポークには一般的な買い物の楽しみに加えて、オーダー主のオーダーの楽しみ、仮縫い等の過程の楽しみが加わります。さらにビスポークの古着には、上述のようなオーダー主の知見や人となりへの想像が乗っかり、場合によっては後日談としてオーダーの背景、工房側の反応等の物語が聞けることもあり、せっかく買うならこういったことまで味わい尽くした方が満足度は高いのではと思ってしまっているわけです。「たかが服、たかが靴」ではあるのですが、当店はそういった物語のある商品を集めようとしております。一度見にきてやってみてください。
大変恐縮ではありますが、当店、クレジットカードに対応できておらず、もし何かお買い上げいただける場合は現金かPayPayでの決済となってしまいます。ご不便おかけいたしますがご容赦いただきますようお願い申し上げます。また不定期営業であり、倉庫や自宅にて保管し店舗にない商品もありますので、原則予約制とさせていただいております。すでにお買い上げいただいている場合もありますのでお手数おかけしますが、ご来店の際はメールか電話、InstagramのDMにてご連絡いただきますようお願いいたします。先約がなければ土曜日曜祝日を問わず、また夜間についてもご対応させていただきます。また当店につきましてはこちらとこちらも読みいただければありがたいです。
