Tango241~245、別注シューズ

個人の感想ですが古い靴ほど「格好がいい」ように感じます。その「格好がいい靴」の木型は、本家が保存していると思うので、それで作ればいいと思うのですが、そういう気配はなく、現在の靴は、トゥの形等の細かいディテールは継承していても、全体感が違う気がいたします。

問題は、そのかつての美しいフォルム、昔の限られた天才職人のスキルによるものなのか、木型とある程度の技術があればできるのかということであり、この辺りを、古い実物を見ながら日本の若い靴職人の人と話したところ、後者に近い感覚でありました。何故できないのかと聞くと、こんなのは見たことがない、そんなことを考える時間もない、親方のスタイルを継承している、自分らしさを出している、効率や採算を優先してしまう、、、、。といったような答えが返って来ます。

ということなら、その絶滅してしまったようなフォルムを再現してもらおうということで、別注品の企画をスタートさせました。当店にある、コークストリート時代のクレバリー、御本人が現役バリバリだった頃のステファノベーメルやマリーニ、今は亡きローマの名店ガット等の靴を現行品や既製品と比べながら研究し、余計な装飾や細部のディテール等での差別化には走らず、既製品や最近のビスポークでは出せない、素で美しく、なんとも言えないフォルムを目指し削り出しております。現在5パターンの展開で、今後も少しずつ増やしていく予定でおります。

削り出したそのフォルムを崩したくないのでビスポークは、お受けはしますが、お薦めはしていません。サンプルでサイズをお試ししただき、(若干の調整は行えますが)その木型でお作りする受注生産となります。ですが製法はハンドソーンの10分仕立てです。またインソールは伝統的な製法の物に加えて、ハイテク素材を使用し、フォルムはそのままにクッション性を高めた物のご用意できます。

靴のビスポークは、甲高幅広の我々日本人にとって、非常に高価なうえに出来上がりで失望することも多く、なかなか手強い代物です。「きっと完璧なものができるはず」、という期待を膨らませながら待っているその時間が一番幸せ、という意見もあります。一方で既製品はどうしても効率性や在庫リスクを勘案せざるを得ず、製造工程や素材で簡略化が否めません。

当店の別注靴は、両者のいいとこ取りを目指しております。はじめにシェイプをご提示し、それをサイズ展開することで出来上がりのイメージを担保、一方でビスポークと同水準、あるいはそれ以上の手間をかけて制作しますので、既製品のように大量生産を前提とした製造工程の効率化、簡略化はいたしません。そもそも簡略化できるようなフォルムではありません。

ビスポークに比べ、履き心地は劣るかもしれませんが、その履き心地は試着時に確認はできますし、履き心地の優先順位が高いお客様は、クッション性を高めたものをお選びいただければ、フォルムはそのままにスニーカー並みの快適さをご提供できます。

また、当店カールフロイデンブルグも割と豊富に在庫しております。アップチャージになりますが、ご検討いただければ幸甚です。