Tango235-236、別注シャツ

オーダーシャツをご経験されたお客様も多いかと思いますが、首回りの採寸時、「実寸39㎝なので40㎝でつくります」と言われることは一般的かと思います。ですが何故39㎝の実寸なのに40㎝で作るのでしょうか。

当店の解釈は、襟の角度にあると考えます。日本のシャツの襟は身ごろに対して、襟が直角、あるいは直角に近い形でついていることが多いのですが、人間の首と胴体は直角にはついていませんので、その直角で縫われたシャツを着用すると、襟は当然後ろに引っ張られます。それでその引っ張られるマージンを確保するために1㎝余分に取っているのではないかと、です。

ちなみにイタリアのシャツの多くは直角にはついていません。なので40㎝なら40㎝であります。中には40㎝表示で実寸39㎝というシャツ(もちろん新品です)の結構多く見ます。

ではなぜ、日本のシャツはそういう作りなのでしょうか。当店の解釈は、それの方が店頭に並べたときに、角度がついて見栄えが良く、売りやすいから、と考えています。作りやすいのかもしれません。あるいは何も考えておらず、経験上、首がキツイとクレームが出るのでそうしているのかもしれません。

襟はわかりやすい一例ですが、前立ての折り返しの幅や、脇、襟の縫い方等、随所にこういった小技が施されているわけです。

日本は着物の文化なので直線が主体ですが、欧州は曲線が主体です。裁断ばさみもそういう設計です。江戸末期以降、長い歴史の中で日本は知らず知らずのうちに日本流にアレンジしてしまっているのかもしれません。ですがそういうDNAの違いを理解した上での採用なら、それは個性かもしれませんが、何も考えずの採用であれば、やれやれ、かと思います。

一方のイタリアでもコストダウンや機械化、効率化は進んでいますので、古き良き時代のシャツは少なくなっています。

当店の別注シャツは、店頭にある古き良き時代のシャツをレスペクトしながら研究させていただき、昔ながらの技法を踏襲して作っています。生産量は限られますが、ガラパゴス道を貫き、味のある品を作っております。生地もカルロリーバのビンテージシルクやアイリッシュリネン等も数に限りがありますがご用意しておりますので、ご検討いただければ幸甚です。