Tango164~165、パリロブの未使用

もともとジョンロブは、1866年リージェントストリートに開店するのですが、その人気ゆえの世界展開で疲弊。その結果、海外部門をエルメスに売却、自身はセントジェームズにて規模を縮小し、今もビスポークに特化しながら現在に至っています。

一方、買収したエルメスは既製品をノーザンプトンで製作し、自身のブティックでジョンロブの刻印を冠したまま販売を長年続け、近年は分離してジョンロブとしての店舗展開をしています。

現在、ジョンロブというと一般的にはこのエルメス系列の英国製既成靴を指しています。ノーザンプトンで作られた、グッドイヤーウエルト製法の靴ということで、エドワードグリーンやクロケット&ジョーンズの延長線上にあるわけですので、我々といたしましては、ハンドソーンでもない規制靴を、エドワードグリーンやクロケット&ジョーンズともども、ジョンロブにおいても、高価格で提供されているわけで、厳しい世界にさらされている状況であります。

ですがエルメスには、スーツではかつてチフォネリが担当していたような、ビスポークの世界が存在し、靴においては世界中のジョンロブから入った注文をパリの工房で製作しております。よってセントジェームズで作られるビスポークのジョンロブをロンドンロブ、このパリで作られるビスポークをパリロブと呼んで区別しています。

パリロブの利点はエルメスが絡んでいますので、現行品で最高の革が供給されている点にあります。素材の枯渇が懸念されていますが、そういう意味ではラストリゾートともいえます。

当店10足以上、パリロブの在庫がありますが、Tango245はその中からデッドストックを2品ご紹介いたします。Tango164は90年製のスエードシューズです。「上質なスエード、繊細なフォルム」というありきたりな言葉しか浮かばない、本当に「履いてしまっていいのうか」と思うオーラがあります。

Tango165はゴルフシューズです。パリロブのビスポークは車が買える金額ですので、おいそれとはオーダーできません。黒の内羽根から1足ずつ足していっても、ゴルフシューズにたどり着くには一代では厳しいような気がいたします。さすがにゴルフシューズをパリロブでビスポークしている人は欧州でも少ないのではないでしょうか。相当筋のいい物件と言えると思います。