Tango090~092、アントニオ・パニコ

ナポリのアトリエでオーダーし、芝のホテルで仮縫い、またナポリで中縫いと、のんびりしながら、2000年に納品された、アントニオ・パニコのスーツ、紺無地、チョークストライプ、バーズアイの3着です。

同じ日に3着、生地も仕様もお任せでお願いしたのですが、ナポリのアトリエでの中縫い時、これまでニコニコしていた同氏が3着目を見ていきなり怒り出し、職人をどやしつけた後、「すまんが今日は帰ってくれ」と言われたのを覚えています。納品が延びるのには慣れてますし、何より自分の注文を同氏が真剣に請けてくれていることに感謝し、近くのホテル、マジェスティックに戻ったのですが、次の朝、同氏から部屋にチョコレートの詰め合わせが届いたのには恐縮しました。

そんなスーツですがかなりの圧を感じる品で、紺無地のスーツで最近ようやく着れるようになりましたが、それまでは完全に着られてしまっていて、紺無地でそれですから、チョークストライプやバーズアイはいうに及ばずで、ミントコンディションを保っています。もちろん裏地の処理は3着ともフラシです。

Tango091も圧巻の1着で、光沢のあるネイビーに間隔が開いたピンストライプの生地で、バンチからだとまず選ばない生地であります。それをダブルでラペルも幅広で仕立ててあり、多分これしかない組み合わせで、これしかないだけに別格の雰囲気を持っています。しかもパンツはモーラでなくアンブロージ。オーダー主に合ってみたい1着です。

Tango092 はパニコ鉄板のカシミアのポロコート。オーダー主は日本のビスポーク界では知らない人がいない存在で、当然マエストロのパニコ氏といたしましても粗相ができない渾身の1着であります。