Tango061、マリーニ

ビジネスマンたるものジャンニ・アニエッリは気持ちだけでも意識させていただきたい存在で、政財界を動かし、王侯貴族との交流は無理でも、発する言葉や所作等は勉強になります。この世のほとんどすべての物を手に入れてしまい、しまいには「(買えない)風が好きだ」という氏ですが、その彼の足元を飾るのが、マリーニの靴であります。

スペイン坂を少しテルミニ駅に歩いて行ったところにあるマリーニ、創業は1893年(明治時代)です。ラタンジやステファノベーメルとかもそうなのですが、イタリア靴には、これどうなん?という作りの物が少なからずあります。それでもラタンジだから、ベーメルだからと言い聞かせたり、自分にはわからない良さがあるはず、と納得させようとしますが、モヤモヤは払しょくされるどころかより増幅され、それを個人的にイタリア靴の謎と呼んでいます。マリーニも同様で、いい感じのもありますが結構手ごわい猛者も鎮座しており、何かを試されている気さえします。

店主は、ローマを訪れるたびマリーニを訪ね、その手ごわい猛者たちに鍛えられつつも、回を重ねながら選んだ「ビスポーク流れ」がこの品です。結構履きこんでしまいクラックも若干入ってしまっていますが、いいマリーニの見本として引き継いでいただきたいと考えております。かつては年間50足、「幻の靴」と言われた工房の「当たりの一足」です。