Tango030~032 、アイリッシュリネン

当店では、断捨離モードのお客様に「究極の3品」として、ビキューナのコート、ロシアンカーフの靴と共に、お薦めしているのがアイリッシュリネンのスーツ・ジャケットであります。ビキューナのコートもロシアンカーフも手強いですが、希少性から言うとアイリッシュリネンが一番レアだと思っております。

リネンは、概ね3工程あり、フラックスという原料を栽培・収穫する工程、それを紡績し糸にする工程、それを織って生地にする工程で、本来はこの3工程全てアイルランドで行われて初めてアイリッシュリネンとなるかと思いますが、現在フラックスは、フランスとベルギーが主流でアイルランドに農場はなく、紡績工程や織る工程は中国が主流のようであります。

アイリッシュリネンというとハートマンズ社が有名で「リネンのロールスロイス」といわれていましたが、同社も2004年に廃業、また営業中もフランスやベルギーのフラックスを使用していたようです。アイルランドでは現在わずかに残った小さなメーカーが、アイリッシュリネンの組合を作っているのですが、その組合のアイリッシュリネンの定義も、上記3行程のうち、どこか1つの工程がアイルランドで行われていれば認定されるようなので、ちょっと違うのかもしれません。

本物のアイリッシュリネンの魅力は、スーツの生地で言いますと、いぶし銀のような鈍い光沢感とコシにあり、いわゆるアイルランド的なという意味のアイリッシュリネンとは、凄みがちがいます。実際当店でも、スーツやジャケットをお探しでお越しいただいたほとんどのお客様が、アイリッシュリネンのスーツをお手に取っていただけます。光沢感や色目等の説明の必要もなく、やはり存在感が違うようです。「知らなければ良かった」の好例であります。

この凄みの源泉は、アイルランドで栽培される原材料と湿式紡績機を使った紡績技術といわれています。ハートマンズ社倒産後、同社の機械は南アメリカに移転されるのですが、その企業も結局は倒産してしまっています。ということで、原料は現地では栽培されておらず、紡績技術も途絶えてしまっていますので、本当の意味でのアイリッシュリネンは、40-50年前頃のデッドストックまでさかのぼらないと意味がないと思われますので、一番厄介と考えているわけです。

Tango030、031、032はコスタンティーノが持っていたアイリッシュリネンの生地で、今は亡きフェリーチェ・ビゾーネが仕立てたミントコンディションのスーツで、032は、スカルピーノ時代のデッドストックです。トミーナッターのアイリッシュリネンのビスポークスーツ(Tango101)もほぼデッドストックで在庫しております。