Tango001~003、ロシアンカーフvol.1

89年11月のブルータスの「靴だけは外国製に限る、という人が多い」特集で、「いつかはロンドン」と想い、それがかない92年に初めて渡英した際、時間を見つけて真っ先に向かったのがジョージ・クレバリーでした。

当時は、ビスポークと既製品の違いも判らず、「この価格差は何なんだ」と。クレバリーの刻印があればそれで満足だったので、店頭にあるノーザンプトンのどこかの工場製の規制靴を買って感動してホテルに戻りました。後日ロシアンカーフを思い出し再訪、グラスゴー氏に、ロシアンカーフを聞くと、鞄ならと、左上の棚にいくつかあったアタッシュケースを見せてもらえましたが、圧倒的な存在感で、持っても似合いませんので断念。以来ロンドンに行く度に在庫確認をするようになり、そして96年、「いつかこれが似合うような仕事ができるように」と購入したのがこのTango001です。

沈んだ年が1786年とされているので、日本は江戸時代で吉宗の享保の改革の少し後、個人的には伊藤若冲の作品とかぶります。少なくともエルメスのクロコのバーキンやケリーより価値はあると思っております。結果的にこのかばんに似合うような社会人にはなれず、一回も使うことはありませんでしたが、どなたかに受けついていただければと考えています。

後年アメリカ人から譲り受けた、アタッシュケースTango002とグラッドストーンバッグTango003も在庫しています(写真4枚目)。どちらも本人のワンオーナー、多分未使用で、購入したものの使えなかった当人の気持ちが伝わってきます。