別注コート

 

店主は、生地を見ている時が心が一番落ち着くのですが、アイテムではコートに一番思い入れがあります。イタリアのレストランで食事中、老人が入って来て、そのコートを脱ぐ仕草、ウエイターに預ける仕草に目を奪われたのがきっかけでして、その結果、当店のコート在庫は、コートだけで店ができるほどであります。

そんな状況下、当店にコートをお探しで当店に来ていただいたお客様のほぼ全員に手にとって頂けるコートが1着あります。店主が20年以上前に誂えたもので、ビンテージの生地ではありますものの、通常のよくある生地で、ビキューナでもカシミアでも、またフォックスでもロロピアーナでもありません。アイコン的な装飾もなく、素のフォルムとそこからくる佇まいで勝負できている品です。

当店ではこのコートをレスペクトして別注品の扱いをすることにいたしました。このコートのサムシングを残したいと考えたためであります。コートですので、ファーストリリースは今年の秋になるかと思いますが、やる以上は、何処まで近づけるかはではなく、この品を超えるものを、ご提供したいと考えております。

仕様は、スーツ同様、正真正銘100%フルハンドのビスポークとと通常、世間一般で言うフルハンドのビスポークの2パターンで展開したします。生地はお持ち込みいただいても、当店の在庫からお選びいただいても、バンチからお選びいただいても構いません。また、当店在庫の他のコートを素材に、それをレスペクトした別注仕様にも、それをモディファイしたリノベーションにも対応可能です。着丈長めのアルスターコートなんかはぜひ一着お持ちいただきたいところです。1年間はお試し価格でご提供したしますので、ぜひこの機会にご検討くださいませ。

店主がひとつわからないのは、イタリアでコートのビスポーク(スミズーラ)をすると、スーツより高価である点です。コートは長めのジャケットとどう違うのか、単体で頼むと結構な値段になり、また多くのサルトが外注に出している、パンツの値段を大きく上回ってしまうのはどういうロジックなのか、過去に何度か聞いてはいるのですが覚えていないのであります。一方で何かの記事で、パンツ職人さんのインタビューが載っていて、「1本のパンツの製作には30時間かかる」と読んだことがありますが、ジャケットが長くなるだけで、製作が30時間以上余計に時間がかかるものか、覚えていないということはお腹に落ちていないということですから、自分の中で納得ができていないんだと思います。

ということで、当店、コートの価格設定は、スーツと同水準に設定しております。コスト増分はこちらで負担いたします。ですが手抜きはいたしませんので、コートをお考えのお客様は選択肢の一つのお考えいただければありがたいです。