Tango233、カールフロイデンブルグ

カールフロイデンブルグは、ドイツのタンナーでボックスカーフが有名ですが、環境規制があって2000年頃に廃業してしまった企業であります。タンナーの紹介記事が時々ありましたが、カーフでは、カールフロイデンブルグがやはり別格で、他は1ノッチか2ノッチ落ちるというような感じを、当時、その行間から受けたものです。

同社は、品質を維持すると環境規制には適応できないということで廃業したという、いかにも我々が感じる、ドイツの原理主義的決断を選択されたわけでありますが、その一徹さが、製品の品質を担保してくれているようで、今の時代、逆に安心感があります。また、一枚革の状態で見ると、それほどの雲上感はなく、「まあこんなもんなんかな」という感じでもあるのですが、製品になって磨くとやはり雲上です。

世界的な環境規制は厳しく、多くのタンナーが廃業しているようです。規制は域内で一律か少なくとも同一国内では一律のはずなので、規制をクリアーしながら、品質を維持するのは、カールフロイデンブルグができなかったわけですから、他のタンナーもそう簡単ではないと思われます。カールフロイデンブルグから派生したタンナーもありますが、品質が担保できるのなら何も本家が廃業する必要はないわけですし、規制のない(なかった)よその国で始めるのも「何だかな感」があり、突き詰めていくとなかなか難しい問題があるように感じます。

また製造工程もさることながら、素材の枯渇も深刻だと思います。一昔前は、車の本革シートは、標準装備は外車の超高級車に限られ、高級車でもオプション設定でありました。それがいつの頃からか、国産の中級車でも上級グレードで標準装備されたりし、家具にも頻繁に使われるようになりました。これが中国や東南アジア諸国の生活水準の向上と相まって、需要は増大しておりますので、これもなかなかに難しい問題であります。某大手自動車メーカーは、革シート用に牧場?を運営しているという話も聞いたことがあります。資本の論理から言って、自動車メーカーが乗り出して来ていると、ビスポークシューズ業界どころかシューズ業界にとって、質よりもまず量の確保が先決といったレベルになるのではないか、とも思います。

別に店主がこういったお話をするまでもなく、皆様もすでにモヤモヤと思っていらっしゃるので、せっかく作るならカールフロイデンブルグを、ということなのかもしれません。靴職人さんの手持ちも激減中と聞きますし、このままあと5年もすれば、当店ぐらいにしか残っていないかもしれません。