Tango122~127、ダル・クオーレ

店主は接客させていただく際はできうる限りスーツを着用するようにしているのですが、「そのスーツどこのですか」とよく聞いていただけるのが、ダル・クオーレであります。また、仕立て職人さんと店にあるいろいろなスーツを手に取りながら話をしていて、ヘンリープールやパニコとともに「これいいですね」と感想を述べられるのもダル・クオーレです。

ダル・クオーレの特徴は小さくて深いアームホールにあるといわれ、そのアームホールの深さが、小ささを吸収し動きやすさを生み出す一方で、その小ささが逆にまたいい仕事を返してくれて着る人にストレスを感じさせないと言う、高次元の融合を生んでいるようであります。また個人的にはそれに加えて肩やラペルにかけての雰囲気がなんともいい感じであり、「そのスーツ、、、」と聞かれる理由もその辺りかと思っています。

ですがそのダル・クオーレ、製品のばらつきが多いようです。ハンド比率は低くない一方で、かなりの生産数量ですから、結構ばらつきは大きくなるのもいたしかたないのもかもしれません。もともとライン(工場)もいくつかある一方、ここ数年の為替の動きもダイナミックに動いてきましたから、分かりやすい話ではなくなっています。

単純化すれば、ユーロが安かった時期の上級ラインで作られた、当たりの個体に当たれば当たり、その逆は考えただけで、、、ということかと思います。ですがセレクトショップは毎年引き取らねばならず、またハズレを撥ねられないと思いますので、店内、特にアウトレットなんかは消費者の眼力が試される真剣勝負の鉄火場であります。それでも吊るしはまだ選べます。ですがスミズーラは逃げられません。

そんなダル・クオーレ氏もコロナ過で逝去されてしまいました。今後、当たりのスーツ、特に未使用品は貴重だと思われます。当店、吊るしですが未使用品のスーツが4着(44と、46が3着と50)、ユーズドのスーツが2着(どちらも44)、あとビスポークのカシミアのミントコンディションのコートが1着あります。